昨年は、新型コロナウイルス感染症の落ち着きを見せるとともにそれまでは屋外では原則不要、屋内では原則着用としていたマスクの着用が令和5年3月13日からは個人の判断が基本となりました。さらに「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」では、新型コロナウイルス感染症の位置づけを、それまで「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」としていましたが、5月8日から季節性インフルエンザや風疹、麻はしか疹、水みずぼうそう痘などが指定されている「5類感染症」に変更されました。
マスク着用が個人の判断とされた3月はほとんどの方がマスクを着用していましたが5月の「5類感染症」移行や7月の酷暑の来襲にともないマスク着用者は大幅に減少してきました。
さて、推進工法業界の海外展開活動は、昨年のコロナ感染症対策が変更になるよりも早く様々な活動が実施されてきました。プライベートセクターの活動では、ホーチミン市のパッケージGにおいて、ベトナム人技術者の活躍により推進工事が完了しています。またハノイ市下水道プロジェクトではパッケージ1の本邦企業が受注した推進工事が完了し、パッケージ2の推進工事が最盛期を迎えています。さらにインドネシアのゾーン1の推進工事を本邦企業が7月に契約しました。パブリックセクターの活動では、令和4年8月にハノイ市で日越政府間会議、9月にはインドネシアのバンドン工科大学で推進工法セミナー、10月にはカンボジアで第5回日カ政府間会議が開催されてそれぞれの国向けの推進工法基準(青本)が紹介されています。8月の第3回AWaP総会では、参加国の推進工法基準の国家基準化が提案されています。7月のGCUS東南アジア委員会では防菌剤のTCVN化が議論されるなど推進工法周辺技術の海外展開活動も活発化しています。
本誌では、過去にも数回推進工法の海外展開をテーマとした特集を行ってきており、パブリックセクターの活動、プライベートセクターの活動の意義、目的および現状の取り組みと将来展望などをご紹介してきました。本稿でも基本的はそれぞれのセクターごとにポストコロナの海外展開活動を紹介して頂きます。
読者の中には海外進出をもう既に行っている方、まだ進出には踏み切れなくても興味を持たれている方々、コロナ禍で進出を諦めた方もたくさんおられることでしょう。今回の特集を読んでいただいて、再開された海外展開の取り組みを参考にもう一度海外に目を向けて前進されれば幸いです。日本の推進工法は海外から求められる技術であり、日本の推進工法にかかわる方々が「One-teamJapan」の旗印のもとに手を携え海外展開に関するヒントがひとつでも見つかれば、今回の特集の意義があったものと考えます。
(編集担当:森田弘昭)
巻頭言 | 令和6年年頭にあたり 推進技術への期待 松原 誠 国土交通省 水管理・国土保全局下水道部長 |
今月の推論 | 下水道インフラの「新たな価値創造」 北極星 |
新年のごあいさつ | 中野 正明 (公社)日本推進技術協会会長 |
総 論 | 日本下水道事業団の国際展開の取組について 若林 淳司 (地共)日本下水道事業団 国際戦略室室長 |
特定外国人技能制度 横田 敏宏 (公社)日本推進技術協会 専務理事 |
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解 説 | 日越間の下水道分野における協力活動の歴史と実績─日越外交関係樹立50周年─ 田本 典秀 ベトナム建設省技術インフラ局JICA 専門家 (下水道政策アドバイザー) |
インドネシアにおける推進工法の普及状況と下水道整備のこれから 郡川 雄輔 JICA 専門家 インドネシア共和国 公共事業・住宅省 |
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カンボジア JICA 下水道技術協力プロジェクトを終えて 小松 海里 (地共)日本下水道事業団 東日本設計センター土木設計課 (前 JICA 専門家カンボジア王国公共事業・運輸省) |
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GCUS 東南アジア委員会の活動 森田 弘昭 下水道グローバルセンター東南アジア委員会委員長 日本大学教授(本誌編集委員会委員長) |
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川崎市における官民連携による海外水ビジネス展開支援 布施 陽一 川崎市上下水道局 下水道部下水道計画課 技術開発担当担当課長 奥村 誓悟 川崎市上下水道局 経営戦略・危機管理室 〔国際事業推進〕担当係長 |
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東京都下水道サービス㈱の国際展開 栁 雄 東京都下水道サービス㈱ 国際事業支援室長 |
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日本テクノ㈱の海外展開 ~経験の共有・ビジネス支援~ 井上弥九郎 日本テクノ㈱技術本部シニアコンサルタント |
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㈱建設技研インターナショナルの海外展開活動 朝倉 徹 ㈱建設技研インターナショナル都市インフラ部 |
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推進工法の活用によるウクライナの復旧と復興 三浦 良知 日本工営㈱ 上下水道設計部部長代理/ウクライナ復興支援室室長 |
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海外水ビジネス・非ODA /民需への展開 姉崎 正幸 ㈱日水コン インフラマネジメント本部 海外インキュベーション事業部 |
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ハノイ市エンサ下水道整備事業PK2の現状と今後について 張 俊業 鉄建建設㈱ 海外事業推進室エンサ作業所長 本島 浩孝 鉄建建設㈱ 海外事業推進室ハノイ駐在事務所長 加取 新 鉄建建設㈱ 海外事業推進室エンサ作業所工事係長(推進担当) |
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㈱熊谷組の土木請負事業の海外再展開~ジャカルタ下水道整備事業(第1区)の幹線工区工事に着手~ 門前 文浩 国際本部国際建設部長 |
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コロナパンデミック以降の掘進機メーカの海外事業活動 佐藤 徹 ㈱イセキ開発工機 海外営業部 |
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インドネシア国ブカシ市での泥水式推進施工の現状 岡嶋 章好 機動建設工業㈱ 国際事業部次長(インドネシア建設駐在員事務所長) |
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ベトナムにおける防食材料の新たな取り組み 新田 智博 グローバルワークス㈱ 代表取締役 |
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東亜建設工業㈱の海外展開と海外赴任を経て感じたこと 唐澤 俊樹 東亜建設工業㈱ 国際事業本部土木部積算課 |
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特別寄稿 | 推進技術の海外展開に向けた技術的検討─東南アジア諸国への展開における酸性土壌の影響およびその対策について─ 笹岡 孝司 九州大学大学院 工学研究院准教授 島田 英樹 九州大学大学院 工学研究院教授 濱中 晃弘 九州大学大学院 工学研究院助教 |
海外普及活動報告 | 推進技術海外普及事業報告 インドネシア バンドン工科大学技術セミナー 中野 正明 (公社)日本推進技術協会 会長 |
随 筆 | これから建設業を担う若者たちの今 涌井 優 三井住友建設㈱ 土木本部土木技術部 基礎地盤・環境技術グループ |
ゆうぞうさんの山紀行 | 第95回 九州皿倉山 藤代 裕三 |
年間総目次 | 2023年 Vol.36(令和5年1月号〜12月号) |