発進・到達

2023年10月号 発進と到達

 現在、国際的な取り組みとして「SDGs」(持続可能な開発目標)が進められておりますが、その17ゴールのうち11番目に「住み続けられるまちづくりを」があります。また、国内においても「国土強靭化計画」が推進されていますが、これらは、安全で災害に強く社会インフラが充実した住みやすいまちづくりのことであると考えられます。
 なお、先の東日本大震災において地下インフラ設備の安定性が評価されたことや、近年多発する線状降水帯による豪雨災害に伴う浸水対策など、それらの実現に向けて推進工法の果たす役割は多様化するとともに、社会的需要は増々高まっています。
 しかしながら、都市部では、地下インフラ設備(上下水道、ガス、電気、通信等)のパイプラインが縦横に敷設され、さらに地下鉄、道路トンネル、共同溝等の重要な構造物が建設されており、既に過密状態となっています。その中にあって、新たなパイプラインの構築や既設設備のリニューアルを行うためには、交通規制や周辺環境、他企業埋設物への影響等の様々な課題を検討する必要があります。
 これまでもシールド工法や推進工法は社会の変化とそれによる要請に呼応し、その都度課題解決に取り組み、技術開発や改良改善を図り、超長距離、急曲線、大深度(大土被り)推進を実現しておりますが、推進工法に不可欠な立坑部に関しては、設置位置や築造方法の選定等、地下水対策を含め常に生じる検討課題であると考えます。
 そこで、本特集では「発進と到達」に着目し、推進計画設計時の課題と留意点並びに、立坑を設けずマンホール等の既設構造物から直接発進や到達する技術、特殊条件下での推進施工事例などを含めて紹介します。
 本特集が、読者にとって推進工法の計画設計や施工方法選定の参考となり、「安心・安全なまちづくり」に向けた課題解決の一助となれば幸いです。
(編集担当:今田達朗)

 

巻頭言 地下への挑戦
中谷 泰之
㈱奥村組取締役執行役員土木本部長
(公社)日本推進技術協会副会長
今月の推論 未普及解消、その先を見据えたきめ細やかな対応を!
智恵須 納人
総 論 工夫が活かした推進工法の立坑の考え方(仮設立坑と既設構造物)
川合 孝
(公社)日本推進技術協会技術部長
解 説 既設構造物への到達 ~超流バランスセミシールド工法における対応~
森田 智
㈱アルファシビルエンジニアリング技術部部長
貞永 桂子
㈱アルファシビルエンジニアリング技術部課長代理
伏木 裕一
㈱アルファシビルエンジニアリング関東支店工事部次長
分解回収型エスエスモール工法の概要と実績報告
脇田 清司
ジオリード協会会長 ㈱ウイングス代表取締役
既設構造物直接到達のために開発されたヒューム管推進工法
大島 義信
ヒューム管&ベルスタ推進工法協会技術本部長
社会インフラ整備の一役を担う外筒残置式推進工法
吉田 孝治
超泥水加圧推進協会事務局長
掘進機をカスタマイズし安全性と作業性の追求
上別府 淳一
ツーウェイ推進工法協会技術員
耐震性に優れた管路を敷設するCMTリターンシステム
木下 貴義
CMT工法協会技術担当
原田 正靖
CMT工法協会技術担当
高水圧下における既設シールドトンネルからの発進
金澤 貴宏
機動建設工業㈱関東支店係長
朝原 大貴
大成建設㈱東京支店課長代理
到達条件を問わないパイプリターン工法
下本 徹
パイプリターン工法協会事務局長
推進・シールド施工における発進・到達について ─発進・到達時の留意点と創意工夫─
小野塚 良明
㈱福田組東京本店土木部技術部部長
随 筆 建設業での旅と成長
欧陽 笛雲
鉄建建設㈱基礎技術部
ゆうぞうさんの山紀行 第92回 那須姥ヶ平の紅葉
藤代 裕三

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