泥水式

2023年4月号 泥水式推進工法の応用・発展

 一昨年の本誌では、推進工法の主要な推進方式である泥水式、土圧(泥土圧)式、泥濃式の大中口径管推進工法「基礎知識編」を3号にわたり特集しました。今年は、その「基礎知識編」を踏まえて、それら3方式の大中口径管推進工法ついての最新技術動向や施工事例および今後の展望などを述べて頂く「応用・発展編」を今月から特集することになります。本特集号は、泥水式推進工法の応用・発展となります。
 泥水式推進工法は、密閉型推進工法の大中口径において、我が国で最初に開発された工法であり、下水道管路を必要としている都市部の帯水沖積層での管路敷設に貢献した工法です。その後、砂礫層、岩盤層にも適用できるようになり、1980、1990年代では、大中口径のほとんどの管路が、泥水式推進工法での施工となっていました。しかし、その後に開発された土圧(泥土圧)式、泥濃式の地上設備が小型化できる施工方法の登場で、特に地上設備の設置場所がないところでの採用率は、減少傾向にありました。
 泥水式推進工法は、土質の汎用性が高く長距離施工での土質変化にも対応可能であり、泥水圧で水圧に対抗する特徴を持っていることから、特に帯水層地山においては際立った性能を発揮でき、泥水は循環再利用できる環境に優しい工法です。今後も管路敷設には、欠かせない工法であることは明らかです。近年、国内での泥水式推進工法は、すでに地下空間に多くの既存構造物が存在する環境下で、既存構造物を避けるための線形となる大土被りや急勾配推進での適用例が増えており、大土被り高水圧下でのライフライン整備での活用が見込まれます。また、泥水式推進工法は、単にライフラインの管路敷設だけでの利用だけではなく、中小規模のトンネル築造に利用されるなど、その応用技術は、様々な建設への貢献ができる工法となっています。
 本特集号では、大中口径泥水推進工法において、総論では泥水式活用のポイントを、解説では泥水式の特徴を活かした施工事例とそれらを支える技術について、ご紹介いたします。泥水式推進工法の応用・発展が、今後の新たな推進工法の適用方法や管路敷設・構造物構築の工法選定の参考になれば幸いです。
(編集担当:佐藤 徹)

巻頭言 登山とDX
石井 宏幸
国土交通省水管理・国土保全局下水道部下水道事業課長
今月の推論 「コレラ」と近代水道・下水道、「衛生」という言葉
智恵須納人
総 論 密閉型推進工法の先駆者「泥水式」活用のポイント
川合  孝
(公社)日本推進技術協会技術部長
特 集 岩盤での泥水式推進におけるR=60mと37mのS 字曲線施工
安竹  馨
㈱奥村組西日本支社土木技術部
泥水式推進工法における施工のポイント
平野 弘人
南野建設㈱関西本店工事課長
多種多様な施工条件を得意とする泥水式推進工法
後藤 和幸
大栄建設㈱工事部部長
積雪地域における推進工の日進量確保に向けた取り組みについて
安藤 速人
㈱鴻池組北海農業水利事業 岩見沢幹線用水路北1条工区建設工事 現場代理人
江角 孝介
㈱鴻池組北海農業水利事業 岩見沢幹線用水路北1条工区建設工事 監理技術者
佐々木雄亮
㈱鴻池組土木事業総括本部技術本部土木技術部 技術2課課員
厳しい条件への泥水式の適用事例
小森 恭司
機動建設工業㈱土木本部次長
大中口径管推進工事用掘進機の応用~特殊な地盤での施工事例~
佐藤 敬太
㈱イセキ開発工機建機事業本部
大口径泥水式推進工法の機械設備に関する応用・発展編
加藤 寛治
㈱ウイングス愛知営業所長
苦労したヤード確保と地盤沈下を測量しながらの推進工
村山  亮
㈱光建工務部門長
長距離・急曲線推進 コスミック工法の概要と施工事例
中屋甲子三
コスミック工法協会事務局長(奥村組土木興業㈱)
随 筆 これから建設業を担う若者たちの今
持田 真輝
五洋建設㈱土木部門土木本部土木技術部
ゆうぞうさんの山紀行 第86回 4月の弘法山
藤代 裕三
俳句会便り 第八十三回 中本郷顔記念「東雛」俳句会便り

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