推進工事の歴史は、刃口式推進工法すなわち、切羽を開放し自立した地盤を人力掘削する方法で始まりました。この工法では、掘削対象土質があくまでも自立していることが原則ですが、地下水圧があったり、崩壊性の高い地盤では、補助工法を併用する対策を必要とします。その頃の推進専業者は、たくさんの手掘り業者がいました。私も入社したころには、まだ、手掘り推進工事もそこそこにはあった時代で、推進精度の測量機据付に戸惑っていると職人に怒鳴られたのを思い出します。その刃口式推進は切羽を直接掘削するため、切羽の状況(土質状態)を見ながら掘削できます。しかし、密閉型機械推進では、その土質を直接確認することはできません。ただし、泥水式とは異なり、土圧式は、泥土を直接見ながら推進することで、塑性流動性の良否判断しながら推進ができるため、ある意味最も刃口式に近く、掘削土砂の状態を確認しながら掘進する工法ではないかといえます。
このような土圧式推進工事は決して消える工法でなく、むしろ、大口径や、超大口径などでの難条件下では採用の増加が見込まれる工法です。この特集号は、今まで土圧式推進工事に携わらなかった方にも有効な資料として提供できるように編集しました。
4月号に引き続き、推進工法の基礎の第二弾として、土圧式をクローズアップいたします。この特集号では、土圧式の基本概念を理解していただき、工法の特徴や特有の機械設備とその構造等をわかりやすく解説し、土圧(泥土圧)式に特化した知識を深め、施工条件からの工法選定の手助けとし、安全な工法選択と確実な施工を目的にしたいと考えています。
昨今の推進工事で採用されている工法は、泥濃式が一番多く採用されています。次に泥水式となっており、土圧式は大中口径管推進工事の中で、年間の推進延長に対し、1割程度でしかありません。しかし、シールド工事においては、圧倒的なシェアを占めているのが現状です。なぜ、土圧式推進工法のシェアが少ないのかは、コストパフォーマンスに反映できないからなのかもしれません。掘削添加材の選定、配合(濃度)、注入率(注入量)が鍵となり、掘進操作ではトータルパフォーマンスの見せ所ではないかと思っています。また、掘進での切羽管理では、他の工法よりも確実に安定した管理ができる工法であるといっていいでしょう。その概念については、今回の特集の総論および解説を読んでいただき、ご理解していただけると思います。
(編集担当:舩橋 透)
巻頭言 | 改築推進工法普及のために 大林道路(株)執行役員 石川 洋 |
今月の推論 | 熊本地震で考えたこと 太郎&三郎 |
総 論 | ・大都市の施工環境に対応した泥濃式推進工法─急曲線施工・長距離・省面積ヤード─ (株)福田組東京本店土木部技術部推進・シールド担当部長 小野塚 良明 |
・泥濃式推進工法の基本 (株)アルファシビルエンジニアリング取締役副本部長技術士(施工計画、施工設備及び積算) 松元 文彦 |
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解 説 | ・泥濃式推進の高濃度泥水の基本 (株)はりば 佐野 龍児 |
・泥濃式掘進機の基本と既設構造物への到達事例 ツーウェイ推進工法協会 藤井 昭彦 |
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・過酷な施工条件に対応する泥濃式推進工法 ─ミリングモール工法─ ヤスダエンジニアリング(株)設計課長 富田 昌晴 |
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・幅広い土質に適用した超泥水加圧推進工法の施工事例 超泥水加圧推進協会 中園 昭 |
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・ヒューム管推進工法(泥濃式)S字急曲線通過後の既設マンホール到達事例 ヒューム管&ベルスタ推進工法協会事務局長 大島 義信 |
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・泥土圧推進工法の施工事例 サン・シールド(株)専務取締役 米森 清祥 |
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・泥濃式の基本入門「複雑な施工条件に対応」 ジオリード協会会長((株)ウイングス代表取締役) 脇田 清司 |
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・泥濃式推進工法の施工事例 切羽の安定と産業廃棄物の減量化を可能とした複合式推進工法 ハイブリッドモール工法協会 山中 初 |
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座談会 | 泥水・土圧・泥濃式相互評価を試みる 機動建設工業(株) 舩橋 透 大豊建設(株) 武内 秀行 (株)アルファシビルエンジニアリング 森田 智 [進行役](公社)日本推進技術協会専務理事(本誌編集委員長) 石川 和秀 |
随 筆 | 門仲界隈 石川島 日本エッセイストクラブ会員 齋藤 健次郎 |
技術情報 | 非開削地下探査技術 適用の手引き(案)を発行 (一社)日本非開削技術協会地下探査技術委員会 |
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