低耐荷力 基礎知識

2024年5月号 低耐荷力管推進工法の基礎知識

  小口径管を推進可能な工法は、小口径管推進工法、鋼製管推進工法があります。このうち小口径管推進工法は、推進管の種類により高耐荷力方式と低耐荷力方式に大別されますが、低耐荷力管推進工法では主に、粗度係数が小さく軽量であるという特徴を有する硬質塩化ビニル管を使用します。一方で管材料が変形しやすく大きな力が作用すると管本体が損傷するおそれがあるため、先端抵抗力を推進力伝達ロッド等に負担させることや、二工程方式を採用することで、管の軸方向の負担を小さくする工夫が行われました。低耐荷力管推進工法の開発は1980 年代に始まり、その歴史は約40 余年となります。下水道用硬質塩化ビニル管が規格化されたのが昭和49 年(1974、JSWAS K-1) と45 年余り前であることから考えると相当に早い開発着手とも言えます(ちなみに、推進工法用管(JSWAS K-6)の規格化は平成7 年(1995)です)。
  世界で初めての低耐荷力管推進工法は、エンビライナー工法、スピーダー工法、エンビアロー工法(当時)で、その実用化施工は昭和62 年(1987)となります。その後、地下インフラ整備の需要の高まりと社会環境の変化に呼応して泥水式、泥土圧式にも拡大し、次々に新たな推進工法が開発されました。
  低耐荷力管推進工法は、下水道整備の中でも特に汚水管の整備で多く採用され、同時期に開発が進んでいた「径の小さなケーシング立坑」にも対応可能な工法として、狭隘な道路や地上占有条件が厳しい場合にも適用可能な、まさにユニットで時代のニーズ、課題に応えた工法となります。また、泥水式、泥土圧式による工法が開発されたことにより、適用土質の範囲を広げ、長距離、曲線に対応可能な工法も誕生しました。このように下水道の計画・設計の過程で、発注者、施工者の要望に応えるべく技術を開発し進化し続けてきました。その結果、現在でも世界で高い評価を得ています。
  本特集では、これまで社会インフラ整備の一端を担ってきた低耐荷力管推進工法について、資機材の軽量化や操作性の良さ、立坑の小型化等、基本的な工法説明と今日まで進化してきた工法の技術的特長に加え、多様な用途への対応、働き手不足の克服等の直面する課題に対する有効性などを含め「持続可能な推進技術の明るい兆し」を、下水道の領域に囚われず施工事例を交え紹介します。
  本特集が、読者の皆様にとって推進工法の計画設計や施工方法選定の参考となり、社会インフラ整備に伴う課題解決の一助となることを期待します。
(編集担当:田口由明)

 

巻頭言 深刻な「人手不足」解決策は
瀬谷 藤夫
㈱常磐ボーリング代表取締役
(公社)日本推進技術協会理事
今月の推論 「ウォーターPPP」に渦巻く不安と期待(後編)
下水道老異端児
総 論 日本で開発され世界に活躍の場を広げる低耐荷力管推進工法の基礎知識
竹内 俊博
(公社)日本推進技術協会調査部長
解 説 エンビライナー工法による低耐荷力管推進工法の施工技術
田 昌弘
エンビ・ホリゾン推進協会事務局長
スピーダー工法の歩みと取組み
大石 真樹
スピーダー協会
塩化ビニル管推進のトップランナーアンクルモールV工法の概要と特徴
水元 将司
㈱イセキ開発工機国内建機営業部
ユニコーンDH-ES工法の取り組み
米澤 亮太
ユニコーンES工法研究会
長距離推進+複数急曲線推進=難条件解決「ベル工法」
畠中 直人
ベル・ミクロ工法協会技術委員
基礎教育指導実践に優れたスピーダーパス工法
小松 健
地建興業㈱ 施工グループ
投 稿 進化した地中支障物対応推進工法による施工事例 ~島屋北幹線下水管渠築造工事~
東野 洋士
大阪市建設局北部方面管理事務所管理課長
中川 尚也
大阪市建設局下水道部下水道課管渠担当課長代理
上田 浩司
㈱森本組島屋北幹線作業所所長
平井 覚
ヤスダエンジニアリング㈱工事部工事係長
随 筆 推し事とお仕事
梁川 亮
青木あすなろ建設㈱土木技術本部エンジニアリング部トンネル地下技術グループ
ゆうぞうさんの山紀行 第99回 斑尾高原沼の原湿原とブナの小径
俳句会頼り 第八十七回 中本郷顔記念「東雛」俳句会便り

 

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