2022年11月号　人材の確保と育成

　本誌2020年4月号にSDGsの特集「脱炭素に向けて」がありました。施工を本業とする推進工事専門業者に属する筆者としては、メーカーの記事以外はもう一つピンと来なかったように記憶しています。そして同年の10月号「創刊400号記念〜担い手育成と市場拡大に向けて〜」という若手人材の特集号がありました。
　この特集を読んだ時、私は推進業界でのSDGs「持続可能な開発目標」とは、各企業での人材確保と育成が一番必要な事項ではないのか？と感じた次第です。
　土木学会誌など他の専門誌を見ると、施工会社だけでなく発注者や設計者の立場の職種でも若手人材の確保と育成が問題になっていると書かれています。
　そこで今月号は2年ぶりに人材に関わる特集を組みました。学生を送り出す側の教育界の方に就活状況の総論を、施工会社や資機材メーカーなどに人材確保と育成について解説原稿依頼を行いました。
　解説記事は1社2名構成としました。若手の採用や育成を実際に担当され苦労されている人事担当者、片や育成されている側の若手の感想と本音です。さらに同様の趣旨で座談会も実施しています。
　推進業界に限らず、土木分野への若手確保は大きな問題とされています。このまま土木業界への若手参入の減少が続くと、既に高齢化した現在の土木の担い手が引退した後、国土のインフラ整備・修繕・再構築事業が回らなくなり国土荒廃が急速に拡大するという大問題です。地方は若手人口の都市部への流出という問題が重なるため、担い手不足はさらに加速しています。すでに紀ノ川水管橋の落下など色々な分野で国土荒廃の影が忍び寄っているニュースを度々見るようになりました。
　推進業者の20年後を推定してみますと、社員数60名規模の専業者で、2/3が50代以上の社員構成と仮定すれば、あと20年の間に40名の高齢社員がリタイアし、同数の若手が補充できないとその会社は規模縮小か廃業を余儀なくされます。若手の離職率は高いと言われてますので、少なくとも毎年3名以上は入社が必要な計算になります。しかしその会社に毎年3名以上の就職希望者が集まるのかという入口部の課題も重大です。
　このように推進業界を含む建設業での次世代の担い手不足は大きな問題として我々に解決を迫られています。他業種で云われる「残存者利得」を考える時代なのかもしれません。このままでは世界トップレベルと云われる我が国の推進技術も消滅してしまいます。
　この問題に現時点ではおそらく正解はないと考えていますが、各社の苦労・試みを本誌でご覧になっていただき、会社運営の一部に役立てて頂ければ幸いと思います。
（編集担当：林　茂郎）