昭和30年代から40年代の経済の高度成長を背景に、また、昭和39年の東京オリンピックや昭和45年の大阪万博等のイベントを契機に、利用者の安全や利便の向上を担う重要な社会基盤として我が国では重点的に様々なインフラが整備されてきました。これらのインフラは今後、老朽化が今後急速に進行することが予測され、それに伴い事故リスクが高まっています。米国では1980年代より損傷事故が発生し「荒廃するアメリカ」という象徴的な言葉により警鐘が鳴らされていましたが、2007年のミネアポリス高速道路崩落事故(州間高速道路35W号線ミシシッピ川橋、鋼製トラス橋)に代表されるように老朽インフラの事故が多発する事態を招いてしまいました。我が国においても国土交通省が「長寿命化修繕計画策定事業費補助制度要綱について」を2007年に通知するなど事後保全から予防保全への政策転換が図られ、国内外の関係者の間ではインフラアセットマネジメントの重要性が認識されつつありました。しかし残念なことに、2012年12月2日、中央自動車道笹子トンネルにおいて天井板(道路構造物)が通常の供用状態下で落下し死亡者・負傷者が生じるという、我が国において例を見ない重大な事故を国民が目の当たりにすることとなります。このことにより、社会問題としてインフラの老朽化が一般に認識されるところとなりました。
上下水道管路についても、近年、通水機能や道路陥没等の道路機能に支障を来す埋設管路の損傷や水管橋の落下という二次災害に発展する事故が相次いでおり、適切な補修や修繕、あるいは改築が喫緊の課題となっています。また今後は、管理する上で損傷や不良等に注意が必要となる施設量が増大していくことが予測され、日常的な点検や評価を効率的に行い、災害に対する脆弱性も含め予防的に施設全体の状況把握や将来予測を行うことの大切さが強く認識されています。特に上下水道施設の場合、管理者が基礎自治体であることが多く、財源や体制が国や都道府県に比べ脆弱であること等から、如何に知恵を出し、技術を活かして、効率的、合理的に対処していくかが重要となります。
本年の通常国会において、水質基準や衛生管理等一部を除いて上水道事業の所管を厚生労働省から国土交通省に移管する法案が通過することが見込まれ、2024年から新たな管理体制が始動する予定といわれています。その目的は、施設整備や下水道運営等の知見を有する国交省が所管することによる行政のパフォーマンス向上とされています。このことにより上下水道を一元的に管理する等事業連携が強化され、老朽化対策のスピードアップも期待したいところです。
本特集では、このようなインフラの老朽化や対策方針の実態を共有し、特に下水道管路施設における老朽化対策も意識したアセットマネジメントおよびストックマネジメントの積極的な推進、また、老朽化対策の進め方(補修、修繕、改築の合理的な組合せ等)、その実施方法(材料や施工法)について紹介していきたいと思います。特集の内容としては、所管官庁におけるインフラの老朽化への対処方針や制度設計について、施設管理者(関係団体)からは法令や方針に基づく実務的な指針やマニュアルの整備および活用について、それぞれの立場からご紹介をいただきます。次いで、実務事例として、先進的なストックマネジメント等、取り組みの事例紹介をお願いしています。
本特集が、読者の皆様にとって、管理の重要性、緊急性を改めて感じていただき、この課題の早期解決に保有されているノウハウや技術をベースにアイデアをご提供いただく「ひとつのきっかけ」となればと期待するところです。
(編集担当:田口由明)
巻頭言 | どうする 家康 どうする 建設業界 上 直人 日特建設㈱取締役常務執行役員事業本部長(公社)日本推進技術協会理事 |
今月の推論 | 推進工法で核シェルター 全発連会長 |
総 論 | 国土交通省における下水道管路の老朽化対策に関する取組 川島 弘靖 国土交通省水管理・国土保全局下水道部下水道事業課事業マネジメント推進室課長補佐 |
管きょ老朽化対策における日本下水道協会発刊技術図書の活用 江原 佳男 (公社)日本下水道協会技術部部長 毛利 光夫 (公社)日本下水道協会技術部技術課課長 大塚 修平 (公社)日本下水道協会技術部技術課係長 |
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特 集 | 下水処理場・ポンプ場におけるストックマネジメント計画策定について 水田 健太郎 (地共)日本下水道事業団東日本設計センター調査役 |
仙台市下水道事業におけるアセットマネジメントを活用した老朽化対策 田村 典大 仙台市建設局下水道経営部経営企画課(技師) |
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柏管路包括委託第1期包括委託期間を終えて 林 麻央 柏市上下水道局下水道工務課主事 |
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千葉市の下水道管路ストックマネジメントの取組み 桃井 達也 千葉市建設局下水道施設部下水道整備課主査 |
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燃える闘魂下水道【横浜市】 黒羽根 能生 横浜市環境創造局下水道管路部管路整備課長 |
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三浦市公共下水道事業におけるコンセッション方式の導入とストックマネジメント 本島 慎也 三浦市上下水道部下水道担当部長 |
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名古屋市の下水道施設の老朽化対策 河合 克敏 名古屋市上下水道局技術本部計画部下水道計画課課長 |
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大阪市の下水管きょの老朽化対策 檜山 幹 大阪市建設局下水道部事業計画担当課長 |
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神戸市公共下水道ストックマネジメント計画取り組みと課題について 寺岡 宏 神戸市建設局下水道部計画課長 |
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熊本市における下水道の管きょおよび施設のストックマネジメントによる老朽化対策 上村 博之 熊本市上下水道局・総括審議員 |
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下水道管路更生工法の有効性と今後について 渡辺 充彦 (一社)日本管路更生工法品質確保協会技術委員長 |
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下改築推進工法の現状 千田 尚 (公社)日本推進技術協会審査部長 |
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改築推進工法の選択基準 ―EXP工法の概要と施工事例― 佐藤 徹 EXP工法協会技術部委員長(本誌編集委員) |
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既設1号マンホールから施工できる改築推進技術の開発 ―静的破砕推進工法― 矢萩 元彦 機動建設工業㈱土木本部次長 |
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老朽化した既設管を新管に置き換える改築推進工法「リバースエース」 森 治郎 アイレック技建㈱非開削推進事業本部副本部長 |
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二重ケーシングによる改築推進工事の特徴と適用 篠木 拓哉 SHスーパー工法協会技術員 |
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随 筆 | 心理学で考えるやる気の高め方 橋本 和幸 了德寺大学教養部教授 |
ゆうぞうさんの山紀行 | 第84回 雪の仏果山 藤代 裕三 |