多様な断面

2021年9月号 多様な断面の築造

 日本の推進技術は、昭和23年(1948)国内初の工事を行って以来、今日までの70余年の間、多様かつ高度な技術を積み上げ発展してきました。特に昭和30年代に高度成長期を迎えた事で工業化が急速に進み、それに伴い都市部の人口も急増したことで、工業排水および生活排水が増大、公共水域の汚染が深刻な状況となりました。これを受けて昭和45年(1970)下水道法改正時に公共水域の水質保全に係る一項が加えられました。これにより下水道整備が加速した事もあり、推進技術は急速な技術の進歩・発展を遂げ、今日においては長距離推進や急曲線施工に対応できる技術に至っており、現在世界のトップレベルの技術として称されています。
 今日まで推進工法が何故、この様な普及を遂げたのか少し考えてみました。推進工法が普及するまでは、開削による管路の設置が行われていました。開削工法は地上での作業がメインであることから、重機作業が可能となる施工エリアを確保し作業を進める必要があります。そして、掘削および掘削土搬出に伴う重機やダンプトラックの輻輳、掘削箇所の土砂崩落防止による土留めの設置、管路を設置した後の埋め戻し作業が開削工法の大まかな作業手順でありますが、施工に際しては非常に手間の掛かる作業となります。しかし推進工法は立坑築造後、立坑内に掘進機をセットすれば、あとは地中での作業となるため、合理的かつ工事を円滑に進める事ができる工法です。また、作業の安全性も長けており、振動・騒音・排ガス等の抑制により第三者および環境への配慮も担っている工法です。
 この様に施工性・安全性などに優れた推進工法は、下水道分野だけではなく、私達が生活する上で欠かすことができない電気・ガス・水道・通信網といったインフラ整備の構築、または、農工業用水・軌道下・道路下における施工にも採用される等、様々な分野で活躍を遂げています。
 本特集号は「多様な断面」をテーマにしております。推進工法の特長を有効的に活かし開発した技術・工法が今、どのような場面で私達の生活の中で活用されているか、普段何気なく利用しているインフラが、実は推進工法が基となっているものも多くあります。推進工法は今後も様々な分野で活躍し、さらなる発展を遂げていく技術です。これまで造り上げた推進技術の移り変わりも振り返りながら本特集号をご覧頂ければと思います。
(編集担当:植木貴幸)

巻頭言 コロナ禍の東京五輪が示した日本の力
南野建設㈱代表取締役社長
(公社)日本推進技術協会理事
南野 利明
今月の推論 水循環から下水道が消えた!
智恵須 納人
総 論 重要構造物直下での地下空間築造技術と計画・設計上の留意点
(公財)鉄道総合技術研究所構造物技術研究部トンネル
仲山 貴司
(公財)鉄道総合技術研究所鉄道技術推進センター
岡野 法之
JR東日本コンサルタンツ㈱取締役技術本部副本部長技術開発推進本部副本部長
清水 満
解 説 密閉型ボックス推進により2.4mの小土被りで国道を横断
㈱鴻池組東京本店土木部所長
須長 重雄
㈱鴻池組東京本店土木企画部課長
川本 英人
㈱アルファシビルエンジニアリング取締役施工副本部長
松元 文彦
函体推進工法の変遷と多様な断面の築造
アンダーパス技術協会事務局
丸田 新市
密閉型泥土圧式ボックス推進工法による共同溝構築技術
戸田建設㈱東京大学環境整備共同溝作業所所長
松本 浩一郎
㈱アルファシビルエンジニアリング取締役施工副本部長
松元 文彦
JES工法による特殊な断面形状の線路下構造物構築
鉄建建設㈱土木本部地下・基礎技術部
矢島 岳
高速道路直下をPCR工法で抜く
㈱淺沼組土木事業本部名古屋土木部工事課所長
詠田 善雄
投 稿 推進工法を用いたパイプルーフ工法における周辺地山の安定性に関する研究
九州大学大学院工学研究院
高橋 良太
島田 英樹
笹岡 孝司
濵中 晃弘
㈱イセキ開発工機
佐藤  徹
都市基盤・環境・資源センター
一ノ瀬政友
九州大学大学院工学研究院
胡  暁虎
随 筆 話題のインフラツアーに参加 〜東京湾アクアライン裏側体験〜
長野油機㈱製造部資材課
山口 雅永
ゆうぞうさんの山紀行 第67回 急峻な前穂高岳
藤代 裕三

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