土圧式推進工法は、昭和50年前後の年代に泥水式推進工法に続き開発され、密閉型の推進工法の主力技術として発展してきました。特に、大口径では多くの施工で採用されています。その理由は、ほぼリアルタイムで掘削土砂の確認ができ、掘進や回転速度、推進力や排土の調整で泥土性状や掘削土の土圧の調整が容易にできること等から、大断面でも土質や切羽状態の変化への対応性に優れている「信頼性」ではないでしょうか。この優位性は、シールド工法における採用実績の多さからも知ることができます。
土圧式推進工法は、先行し開発された泥水式推進工法の弱点でもあった地上設備を小型化することを狙いに開発が進められました。その特徴は、切羽における土圧・水圧とのバランス機構によって「土圧(バランス)」と「泥土圧(泥土加圧)」に分けられます。また、泥水式では、切羽を掘進機面板で抑える格好になりますが、土圧式はチャンバ内で泥土化した土の取込をスクリュコンベヤで制御することで直接土圧・水圧に対抗する仕組みを有しています。スクリュコンベヤは切羽を密封するプラグの役割を持つほか、回転の制御という操作によって安全に排土調整が行える装置です。土圧式は、チャンバ、スクリュコンベヤ、及び地山の性状にあわせた添加材の調整により多様な地盤に適合する泥土を作り、精緻な土圧管理のもと広い適用範囲、切羽変化への柔軟な対応性を確保しています。
本号の特集では、このような土圧式推進工法の「開発目標」「基本的な切羽安定の構造」「超大口径で選定される理由」「掘進機の顔(カッタヘッド)の選び方」「地盤に応じた施工上の工夫」等に着目し、基本に立ち戻り紐解いてみたいと思います。
土圧式推進工法の優れた特徴を逃さず活かして頂くため、設計・施工時に積極的に比較選定の対象となること、その特徴を理解していただきシールド工法では優位を保っている土圧式が推進工法でも多く採用されることを期待したいと思います。
(編集担当:田口由明))
巻頭言 | 東日本大震災から10年 多田建設㈱代表取締役社長 (公社)日本推進技術協会監事 多田 恵造 |
今月の推論 | 何故、若者は建設業を就労先としないのか 傍若無人 |
総 論 | 土圧式の強み 機動建設工業㈱取締役土木本部長 和田 浩治 |
特 集 | 施工事例から見る泥土圧推進工法の特徴 南野建設㈱東京支店副支店長 榎林 幸憲 |
施工事例から学ぶ泥土圧式推進工法 大豊建設㈱土木技術部 黒田 幸宏 |
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土圧式による超大口径管推進の施工 佐藤工業㈱東北支店石巻作業所所長 坂口 太郎 |
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泥土圧式掘進機の基礎知識 ㈱前田製作所技術本部技術部 藤森 学 |
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泥土圧式マッドマックスの概要 ジオリード協会会長 ㈱ウイングス代表取締役 脇田 清司 |
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CMT工法(複合推進工法) ─長距離推進の事前調査と施工計画について─ CMT工法協会技術担当 木下 貴義 CMT工法協会広報担当 岡村 道夫 |
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随 筆 | 今までとこれからの自分 りんかい日産建設㈱常陸那珂東防作業所 土井 優樹 |
ゆうぞうさんの山紀行 | 第63回 金ヶ岳登頂記 藤代 裕三 |