2023/11/9
日本の推進工法は、昭和23年(1948)にガス管のさや管として内径600mmの鋳鉄管を軌道下の横断のために手掘り式で施工したのが始まりです。その後、昭和40年頃までは刃口式推進工法で電話ケーブル、水道およびガス管等のさや管として主要道路や軌道、用水路等の横断工事に採用する特殊な工法でした。この刃口式推進工法は、切羽が全面開放されており「地盤の自立」が必要条件で、崩壊性地盤や地下水を含む地盤では、切羽安定のため補助工法を必要としました。この問題を解決するために昭和40年過ぎから密閉型推進工法の泥水式推進工 ...
2023/10/2
現在、国際的な取り組みとして「SDGs」(持続可能な開発目標)が進められておりますが、その17ゴールのうち11番目に「住み続けられるまちづくりを」があります。また、国内においても「国土強靭化計画」が推進されていますが、これらは、安全で災害に強く社会インフラが充実した住みやすいまちづくりのことであると考えられます。 なお、先の東日本大震災において地下インフラ設備の安定性が評価されたことや、近年多発する線状降水帯による豪雨災害に伴う浸水対策など、それらの実現に向けて推進工法の果たす役割は多様化するとともに ...
2023/9/10
今月の特集は小(省)面積です。本来推進工法は、管敷設工事の中で、開削工事と比較すれば非開削工事であり、一般的に環境に配慮した持続可能な工法です。 従って、推進工事を紹介すればほとんどの工事が小面積に値するものと言っても過言ではありません。我々は推進工事を行うにあたり、より一層SDGsを意識しながら施工条件や地域環境に配慮し設計・施工に努めていきたいと常に思っています。 2008年12月号にて「省(小)面積化技術の現状と今後(小面積の光と影)」と題して特集しています。読み返せば、小面積立坑システムと事 ...
2023/8/8
今月の特集は「地下水と歩む」をテーマに推進工法やそれに関わる様々な技術を8年ぶりに紹介していきます。 土木工事において、環境負荷低減が求められ施工条件の制約や排水処理水の基準などがより厳しくなっています。 推進工事現場では、施工前に地形や土質、N値、土被り、水頭差などを検討し、工法や必要な補助工法などを選定します。その中でも特に地下水に関する項目は重要です。 土木に携わらない方には地下水というと井戸水のような綺麗で穏やかなイメージをされるのではないかと思います。筆者も以前は地下水についての知識がな ...
2023/7/7
下水道展は、全国の下水道関連企業(団体)の日頃の技術開発の成果等に基づき、下水道に関する幅広い分野の最新技術・機器、サービス等の展示・紹介をする下水道分野における国内最大の展示会です。1987 年の第1 回開催以来、首都圏と地方が交互に開催地となってきましたが、今年は8月1日(火)~ 4日(金)の日程で、初の北海道(札幌)開催となります。 下水道展は掘進機や推進管などの実物を用いて機能や特徴を分かりやすく説明する展示が多く、普段触れることの少ない機械や資機材に触れることができる数少ない展示会です。また ...
2023/6/10
今泥濃式推進工法は、呼び径800~1500のサイズでは国内最多のシェアを占める工法となっています。これには下記のような歴史があると聞いています。 密閉式の泥水式・土圧式は1960年代後半から下水道等の管路整備に適用されるようになりましたが、これら先発の工法でも苦手な分野がありました。それは100mmを超えるサイズの巨礫でした。巨礫が出現すると当時の掘進機の性能では、いとも簡単に掘進停止に追い込まれたのです。 カッタヘッドにローラビットを搭載し、機内にはクラッシャーを装備する、軸抜きのリボンスクリュを ...
2023/5/2
今年度は、泥水式、土圧式、泥濃式それら3方式の大中口径管推進工法についての最新技術動向や施工事例および今後の展望などを述べていただく「応用・発展編」を特集しています。 今月号は、泥水式に続き、土圧(泥土圧)式の「応用・発展編」です。土圧式は、1970年代後半に、切羽の安定性を重視して周辺地盤への影響を抑えること泥水式の泥水処理設備等の地上設備を小型化にすることを目標のひとつとして開発されました。特に、切羽の土圧および水圧に対しては、カッタヘッドによる掘削・混練、地山の性状に合わせた添加材の注入とスクリ ...
2023/4/4
一昨年の本誌では、推進工法の主要な推進方式である泥水式、土圧(泥土圧)式、泥濃式の大中口径管推進工法「基礎知識編」を3号にわたり特集しました。今年は、その「基礎知識編」を踏まえて、それら3方式の大中口径管推進工法ついての最新技術動向や施工事例および今後の展望などを述べて頂く「応用・発展編」を今月から特集することになります。本特集号は、泥水式推進工法の応用・発展となります。 泥水式推進工法は、密閉型推進工法の大中口径において、我が国で最初に開発された工法であり、下水道管路を必要としている都市部の帯水沖積 ...
2023/3/9
昨年も暑い夏でした。総務省消防庁によると昨年の5月から9月までの間、全国において熱中症で救急搬送された方は7万1千人を超えたとのことです。これは記録的な猛暑だった4年前の約9万5千人には及ばないものの、一昨年の約4万8千人から大きく増加しています。気象の変化は、やはり過激さを増してきていると言ってもいいのでしょう。猛暑ゆえの豪雨の発生も顕著となってきています。近年よく耳にする「線状降水帯」などによる「集中豪雨(130mm以上/3時間)」の発生もこの45年で2倍余りに増えてきているそうです(気象庁気象研究 ...
2023/2/10
昭和30年代から40年代の経済の高度成長を背景に、また、昭和39年の東京オリンピックや昭和45年の大阪万博等のイベントを契機に、利用者の安全や利便の向上を担う重要な社会基盤として我が国では重点的に様々なインフラが整備されてきました。これらのインフラは今後、老朽化が今後急速に進行することが予測され、それに伴い事故リスクが高まっています。米国では1980年代より損傷事故が発生し「荒廃するアメリカ」という象徴的な言葉により警鐘が鳴らされていましたが、2007年のミネアポリス高速道路崩落事故(州間高速道路35W ...