発進・到達

2025年12月号 震災復旧と推進工法~技術の転機とその後を振り返る~

 下水道の耐震設計の大きな転換点となった「平成7年(1995年)兵庫県南部地震」。それまでも新潟地震、日本海中部地震、釧路沖地震等でライフラインは大きな被害を受けてきたが、人や資産の集中する都心部で最大震度7を記録したこの震災の教訓から、下水道に限らず土木構造物の設計に「レベル2地震動の照査」という概念が取り入れられた。つまり、設計手法が大きく変わった「転機」である。
 その後も震度7級の大規模地震は繰り返されているが、下水道管路に関する技術基準や設計手法として考えた場合に変化が見られたのは平成16年(2004年)新潟県中越地震の教訓による埋戻し土の液状化対策、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震による津波対策であり、その後の大規模地震での被害実態から、これら設計手法の確立によって耐震性能は確実に向上し地震に耐えられるようになってきた。このようなことから下水道管路の耐震化元年は「1995年」とも言える。
 今年(2025年)は兵庫県南部地震から30年を経た年であり、来年(2026年)は東北地方太平洋沖地震から15年、平成28年(2016年)熊本地震から10年となる。また、新年1月1日は令和6年能登半島地震から丸2年となる、振り返りと今後を考えるのに良いタイミングである。
 本特集号では、下水道の地震対策を牽引された先輩諸氏に、様々な困難との対峙・創意工夫等の振り返りや自由な立場・発想からのご提案をいただき、また、被災からの復旧・復興を記憶に残す技術者からは、「あの被害をどのように捉えたのか」「どのような思いで復旧に挑み、かつ、下水道システムの付加価値を創出してきたのか」等の教訓を集約した。さらには、能登半島地震でも顕著に被害が生じた液状化に対処する技術を紹介する。
 この特集が、道半ばである令和6年能登半島地震からの復旧・復興の参考となれば幸甚である。加えて、これから中心となり活躍される方々にとって今後も確実に起きる大規模地震への心構えとしていただく「温故知新」の機会となり、また、社会構造、今後の地域やまちづくりのあり方等の変化にも対応したレジリエントな「防災・減災」に寄与することを期待し、より多くの読者の皆さまに活用していただきたい。(編集担当:田口由明)

巻頭言 VUCAの時代
中川 喜久治
青木あすなろ建設㈱ 土木事業本部土木企画部長
(公社)日本推進技術協会理事
今月の推論 下水道GX
肝試し
提 言 兵庫県南部地震の対応と現役世代への期待
曽小川久貴
(公社)日本下水道協会 顧問
最善を尽くす努力を
前田 正博
元東京都公営企業管理者 下水道局長
今後の下⽔道管路の耐震設計への提案
⽥中 修司
TNK ⽔道コンサルタント㈱ 代表取締役
総 論 令和6年能登半島地震を踏まえた今後の地震対策や上下水道一体での災害対応
川島 弘靖
国土交通省 大臣官房参事官(上下水道技術)付 課長補佐
石川 剛巳
国土交通省 水管理・国土保全局
下水道事業課事業マネジメント推進室課長補佐
神戸市における下水道の地震対策
小出 信義
神戸市 建設局下水道部管路課長
下水道施設の耐震対策指針と解説2025年版発刊にあたり
水井 朋之
(公社)日本下水道協会 技術部技術課係長
酒井 友弘
(公社)日本下水道協会 技術部技術課係長
溝上 聖章
(公社)日本下水道協会 技術部技術課係長
ヒューム管の耐震設計の変遷と今後の課題
竹森 敬介
全国ヒューム管協会 技術委員長
下水道の耐震対策指針改定の変遷と管路施設の耐震対策事例
小西 康彦
(公社)全国上下水道コンサルタント協会
技術委員会 耐震対策小委員会 前委員長
解 説 液状化対策として注目される特殊集排水管敷設─リカバリー対応が可能なKB ドレーン工法─
原辺 泰秀
KBドレーン工法協会 事務局長
「レジェンドパイプ工法」 液状化・地すべり対策工法の取り組み
橋ケ谷直之
アサヒエンジニアリング㈱ レジェンドパイプ工法協会 理事
フロートレス工法の開発と施工および効果の検証
中坪 雄二
下水道既設管路耐震技術協会 常務理事事務局長
技術士(上下水道部門)
人工ドレーン材を用いるマンホール浮上抑制技術 「アースドレーン工法」
髙橋 弘昌
アースドレーン工法協会 理事
マンホール浮上防止工法、集水管と圧力安全弁で 過剰間隙水圧を消散
西山 聖二
WIDE セフティパイプ工法協会 事務局
追 悼 関田生一さん 横須賀のレオナルド・ダ・ヴィンチ
藤田 昌一
元・東京都下水道局/長岡技術科学大学/㈱東京設計事務所
随 筆 同期は流行り病
本合 弘樹
土木技術統轄部土木技術部技術2課
ゆうぞうさんの山紀行 第118回 御坂山塊三ツ峠山
藤代 裕三
元横浜市下水道局
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