我が国の推進工法の嚆矢は1948年にガス管のさや管を国鉄の軌道敷下に築造することであった。翌年の1949年には大阪市電の軌道敷下に水道管のさや管として推進工法が用いられた。1951年には下水道管の築造に推進工法が採用されている。そして1990年代の下水道整備の最盛期に推進工法も最盛期を迎えた。
都市の地下インフラは、先行して整備された水道管、ガス管などが更新時期を迎えているが比較的浅い位置に埋設されたこれらの管も都市化の進展により地上からの掘削・更新が難しい箇所が増えている。また、想定外の災害に対するリスク管理の観点から水管橋などの地上配管の見直しも検討され始めている。
このような背景を踏まえ水道管などの更新需要に対応する推進工法の採用が増加するのではないかと予見される。1990年代以降の地下インフラ建設における推進工法の採用は下水道管の新設が大きなシェアを占めてきたが、ここにきて下水道事業以外での推進工法の採用についても再度、目を向ける時期が来ていると考えている。
一方で、下水道事業と水道事業が共通して抱える施設の老朽化対策や人口減少に伴う収入の減少、上下水道事業担当職員の減少などの解決を目的に令和6年4月より国土交通省下水道部に厚生労働省の水道部門が統合され上下水道一体の行政体制がスタートした。
このような社会環境の変化を受けて、今後の推進工法のあり方を考えるうえでの参考とするために、水道事業の仕組みや実態、同じく下水道事業の仕組みと実態、また先行している地方公共団体の上下水道行政の一体化の実情、さらには水道管建設に活用された推進工法について各分野の担当者に解説をお願いした。
本特集号が、推進工法にかかわる方々の新たな業務開拓や新技術の開発に関するヒントの発見に貢献することを期待する。
(編集担当:森田弘昭)
巻頭言 | 2025年 年頭にあたり 中野 正明 (公社)日本推進技術協会会長 |
今月の推論 | 「水循環基本計画」を受け、「上下水道政策の基本的なあり方検討会」で骨太の議論を 北極星 |
総 論 | 水道事業の概要 筒井 誠二 国土交通省水管理・国土保全局水道事業課長 |
下水道事業の概要 吉澤 正宏 国土交通省水管理・国土保全局下水道事業課長 |
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上下水道行政の所管の変遷および両インフラの現状などについて 塩路 勝久 (公財)日本下水道新技術機構理事長 |
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解 説 | 熊本市の上下水道統合の歩みと時代に合った組織体制 藤本 仁 熊本市上下水道局計画整備部長 |
川崎市の上下水道事業と推進工法 小林 康太 川崎市上下水道局下水道部下水道計画課・下水道計画課長 山原 久弥 川崎市上下水道局水道部水道計画課・水道計画課長 |
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水道事業における大阪水道総合サービスの取組み(大阪市100%出資会社) 松本 広司 ㈱大阪水道総合サービス |
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水道事業経験者の推進工法への期待 清塚 雅彦 (公財)水道技術研究センター常務理事 |
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水道事業における縦断推進工法の活用事例 二塚 保之 機動建設工業㈱北陸支店営業部長 |
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アイレック技建における上水道への推進工法の取り組み 森 治郎 アイレック技建㈱非開削推進事業本部副本部長 川越 勇 アイレック技建㈱非開削推進事業本部営業部西日本担当担当課長 |
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水道事業におけるハイブリッドシステム(HyW)工法の施工事例 末松 康成 ハイブリッドシステム(HyW)工法協会事務局長 正木 義人 ハイブリッドシステム(HyW)工法協会 檜皮 安弘 ハイブリッドシステム(HyW)工法協会 |
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工業用水管路敷設における推進工事について 大石 真樹 地建興業㈱コンサル営業部 |
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投 稿 | 砂礫、砂岩層地盤を長距離推進で施工したアルティミット工法(土圧式)施工報告 錦 辰太郎 ㈱熊谷組福島電力作業所現場代理人 泉 恵介 機動建設工業㈱関東支店工事課次長 |
海外普及活動報告 | 推進技術海外普及事業報告インドネシア バンドン工科大学技術セミナー 門前 文浩 ㈱熊谷組国際本部国際建設部長 |
随 筆 | 新幹線を間借りした鉄道 山梨 太郎 日特建設㈱技術開発本部知財・戦略部ICT戦略課 |
ゆうぞうさんの山紀行 | 第107回 金時山まつり 藤代 裕三 元横浜市下水道局 |