土被り

2024年10月号 土被り

 日本の都市部において、道路や地下鉄、上下水道、電気、ガス、通信など、様々なインフラが地下部分に整備されています。このような場所に新たなインフラを構築する場合、既存の輻輳した構造物網を避け、深い位置を選定する傾向が次第に強くなってきました。推進工事をはじめとする非開削工事も例に漏れず大深度(大土被り)化が進んでおり、従来にはなかった施工上の課題も生じてきています。いくつか例を挙げますと、発進ならびに到達坑口の土圧・水圧対策や、高水圧に耐えうる掘進機の選定、チェックボーリングが困難であることを踏まえた掘進精度の確保、ゲリラ豪雨を想定した安全対策などがあります。また、管材についても高水圧下で高い止水性を確保できるものが求められるようになりました。
 大土被り部の施工が増える一方で、地形的な制約や環境条件から、小土被り部の施工についても一定数のニーズがあります。(公社)日本下水道協会や(公社)日本推進技術協会の指針では「必要な土被りとして、一般に1.0〜1.5D(Dは管の外形)とされている」と示しています。最近では1.0D以下の施工についても多く報告されています。小土被り部の施工は、切羽の影響が直接地表面に現れやすいことから、道路陥没や泥水奮発など公衆災害のリスクが高く、大土被り部と同等もしくはそれ以上に施工が難しいものと考えます。
 本特集号では「土被り」をテーマとして、発注者、設計者、施工者、管材メーカの方々より寄稿いただいております。大土被り部および小土被り部それぞれの課題を踏まえ、安全に精度よく、高品質なインフラを構築するための技術や材料の開発、実際の計画や施工事例が紹介されています。また、立坑の地盤改良や坑口の改良など、未然のトラブル対策に関する事例も掲載されています。本特集号にて推進工法の「深さ方向への進化」を感じてもらえると幸いです。
(編集担当:山長聖和)

 

巻頭言 マンホール蓋雑感
森田 弘昭
(一社)日本非開削技術協会会長 日本大学教授
総 論 推進工法の設計・施工の要素「土被り」の計画設計・施工の留意点
竹内 俊博
(公社)日本推進技術協会調査部長
解 説 大深度・高水圧下における推進工法を用いた既設下水道管への直接到達について
左野 耕一郎
東京都下水道局中部下水道事務所建設課長
高橋 和宏
東京都下水道局中部下水道事務所建設課課長代理(工事担当)
須藤 拓馬
東京都下水道局中部下水道事務所建設課主任(工事担当)
円形・矩形推進における地盤への影響と施工事例
松元 文彦
㈱アルファシビルエンジニアリング施工本部長
小立坑での大土被り施工(泥濃式)
菊地 純一
ジオリード協会会員 ㈱亜細亜代表取締役
大土被りにおける既設構造物直接到達を安全に行う工夫
吉田 茂美
進和技術㈱機材部
小土被りに対応した函体推進・けん引工法の変遷
中村 智哉
アンダーパス技術協会事務局長 植村技研工業㈱次長兼営業部長
随 筆 銀河鉄道
山口 雅永
長野油機㈱製造部資材課
ゆうぞうさんの山紀行 第104回 紅葉の草津 西の河原露天風呂

 

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