社会インフラ整備としての推進工事において、品質確保と安全の両立は、切り離すことのできない重要な要素です。
工事の品質は、計画段階から始まります。精密な設計と入念な地盤調査を行い周辺環境や地質の変化を見極めることで、施工中の予期せぬトラブルを未然に防ぐことができます。さらに、ICT技術などのデジタル技術を活用することで、現場の状況をリアルタイムで可視化し、品質管理を徹底することが可能になります。これにより、設計と実際の施工のずれを最小限に抑え、高精度な作業を実現できます。また、現場ごとに適した材料や工法を選定することも、品質を高めるための重要なポイントです。こうした取り組みが、高品質なインフラの構築を支え、社会の持続的な発展に寄与します。
一方、安全管理の強化も欠かせません。特に地下工事では、作業者が閉塞的で狭隘な空間で長時間作業することになり、健康リスクやストレスへの配慮が重要です。換気設備の整備や休憩の確保だけでなく、ウェアラブルセンサの活用によって作業者の体調を管理する取り組みも進んでいます。安全な作業環境は労働者の士気を高め、若い世代が安心して働ける職場環境構築につながります。また、ヒューマンエラーを防ぐため、定期的な訓練や作業手順の徹底も必要です。チェックリストを用いた確認作業や、コミュニケーションを円滑にする仕組みは、現場での安全意識を高め、事故の未然防止につながります。
さらに、周辺環境や地域住民の安全にも十分な配慮が必要です。地盤沈下や土壌・地下水への影響などのリスクを見据えた緊急対応体制を整え、施工エリアの安全を確保することは、社会全体からの信頼を得るために欠かせません。事故発生時の避難経路の確保や地盤モニタリングの強化などを通じて、万一の事態に備えた迅速な対応が求められます。
本特集では、「品質確保と安全」をテーマに、ゼネコンの取り組みや管材製造時における取り組み事例や推進専業者の最新の技術動向を紹介します。技術革新を積極的に取り入れ、同時に現場の声に耳を傾けることで、より良い施工環境が生まれます。そして、この取り組みが社会全体からの信頼を勝ち取り、未来への発展を支える力となるでしょう。本特集を通じて読者の皆様と共に、未来の推進工事を支えるための一助となれば幸いです。(編集担当:中林徹司)
巻頭言 | メモリアルイヤー 2025 安田 京一 ヤスダエンジニアリング㈱ 代表取締役 (公社)日本推進技術協会理事 |
解 説 | 大規模ターミナル駅直下での大口径泥濃式推進施工 池本 宏文 東日本旅客鉄道㈱ 構造技術センター・マネージャー 柴原 健人 ㈱大林組 東京駅土木工事事務所・所長 市原由紀雄 東京支店・次長 |
真の安全第一を追求する:推進工事におけるリスク管理と安全対策 江本 宏明 ㈱奥村組 土木本部土木技術部 大村 和寛 ㈱奥村組 西日本支社九州支店土木部 中村 雅博 ㈱奥村組 西日本支社関西土木第3部 |
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推進力伝達材の圧縮量を計測し施工管理に反映 本合 弘樹 アイレック技建㈱ 非開削推進事業本部 |
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下水道用資器材の品質を担保する認定工場制度 岡本 直久 (公社)日本下水道協会 総括検査員 (併)規格検査課担当課長 |
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自動測量機の誤差は台数に比例累積しない! 精度品質への考察 稲葉 富男 ICT 推進工法研究会 技術積算部会長 |
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エースモール工法の点検整備 毛利 勝紀 アイレック技建㈱ 非開削推進事業本部 第二技術部担当課長 |
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高精度が求められる小口径長距離曲線推進 ジャット工法の品質確保技術 濱田 十郎 ジャット工法協会 広報委員 |
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ワキタが提案できる品質確保と安全の技術について 坂﨑 秀郎 ㈱ワキタ 西日本建機レンタル統括部 ICTソリューション部課長 外崎 誠 ㈱ワキタ 大阪中央支店 |
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随 筆 | 能登はやさしや土までも 二塚 保之 機動建設工業㈱ 北陸支店 |
ゆうぞうさんの山紀行 | 第111回 精進湖・三方分山精進湖周遊コース 藤代 裕三 元横浜市下水道局 |