総合 他

2020年6月号 より良い工法選定に向けて

 近年の推進工法をとりまく環境は、上下水道の面的な整備に代わり、都市部を中心に整備目的や施工条件(選択する施工法)についてニーズが多様化しています。
 管路施設の使用目的を問わず、都心部では地下空間が高密度に利用され、施設が輻輳していることから、物理的制約、時間的制約等により新しい施設を敷設(占用し既設に接続する)することの難度が高まっています。また、当初の敷設から相当期間が経過して、改築更新ニーズが高まっている施設も相当数に及びますが、使用中(供用中)の機能を維持しつつ置換することが可能なのか等、多くの条件によって、施工手段を選択せざるを得ないことが少なくありません。
 現場において安全、かつ安価な施工方法を採用するためには、何より設計計画の段階で、これら制約条件を適切に洗い出し、それに適う施工法を選択することが重要となってきますが、その判断に必要な情報が十分に入手できないまま、一般的な概念の中に収めて(実現が難しい選択肢を)あえて、もしくは、やむを得ず、選んでいることはないでしょうか。
 下水道の場合、事業財源の事情から1)既存ストックを活用した浸水対策2)既存施設の耐震対策(補強)3)既設の改築による再構築等が事業目的になることが増えています。一般的に、特に1)でニーズが大きいと思われる「大断面」にはシールド工法が施工の自由度で優位2)は処分制限期間の問題もあるのでやむを得ないこともありますが3)に至っても管更生が原則、というような判断をしていることが多いように感じます。
 確かにその判断が適切な場合が多いことは事実だろうと思います。ですが、ここで考えてみたのが、本当に必要な「機能」を適切に提供するという観点で頭を切り換えたら、もっと良い実現方法があるのではないか。頭の中に刷り込まれた「標準」「ふつう」が「常」と思い込んでいないか。このことを気づかせるための「施工技術の情報」とは何か。
 本号では、これまでは「そもそも推進工法では難しい」「選択肢として推進工法はない」と切り捨ててきた条件であっても、推進工法が相対的に優れるところ、差別化できるところを明確にすることで「こんなことができるのなら、(推進工法を主体とした施設で)原点から考え方を変える」という、設計者の発想を刺激し、大胆に転換する情報を例示できればと考えました。
(編集担当:田口由明)

巻頭言 建設業に「テレワーク」を根付かせる
五洋建設(株)執行役員土木部門担当(営業)土木営業本部第二営業部長(公社)日本推進技術協会理事
河上 清和
今月の推論 善のレトリック
時来りて語る者
総 論 より良い工法選定に向けて
(株)エイト日本技術開発執行役員中部支社長(本誌編集委員)
田口 由明
特 集 制約条件の多い都市部における大口径管推進の工法選定事例
(株)NJS名古屋総合事務所プロジェクトマネジメント1部
筒居  建
(株)NJS名古屋総合事務所プロジェクトマネジメント1部
鈴木 秀人
施工条件から読みとる工法選定のコツ
オリジナル設計(株)水インフラ本部下水道部技術1課
築山 知子
様々な特殊条件下での推進工法選定のポイントと解決事例
(株)三水コンサルタント東日本事業本部東日本事業部東京技術第二部首都圏グループ
袖山  弘
工法選定に必要な条件確認と対応方法
日本水工設計(株)東京支社下水道二部管路設計課課長
越石 博行
現場施工条件に最適な推進工法を探る
(株)アルファシビルエンジニアリング取締役施工副本部長(技術士 RCCM)
松元 文彦
施工条件に適した推進管の選定手法
栗本コンクリート工業(株)東京支店技術営業部副部長
平尾 慎也
コンパクトな設備で施工実績豊富圧入式二工程方式の特長を活かすスピーダー工法
スピーダー協会事務局長
板垣 好宏
随 筆 気が付いたらここにいたとあるドボジョの話
戸田建設(株)広島支店土木工事部工事室現場監督
築舘 雪花
ゆうぞうさんの山紀行 第52回 カバレンゲツツジの甘利山
藤代 裕三

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