推進工法における近年の技術革新はめざましく、推進距離1,000mを超える長距離施工や曲率半径15m以下の急曲線施工などが可能になって、推進工法の適用範囲が拡大することは推進工法の将来にとって歓迎すべきことです。しかし、それにともなってトラブルの発生要素が多くなり、万が一発生した場合の重大性も深刻になっています。推進工法は時々刻々状況が変化し、それに対して的確な判断と対応が要求される工法であるため、数多くあるすべての施工現場で微細なトラブルを皆無にすることは不可能に近いと思われますが、事前の調査を十分に行い施工計画と現場における施工管理を厳格に行なうことによって格段に減少させることは可能ですし、またそうでなければなりません。事前調査こそがトラブルを回避し、適切な施工を約束する重要な一歩であるといっても過言ではありません。
推進工法における事前調査で最も重要なのは土質調査であり、土質の想定違いによるトラブルが最も多く発生しています。そのため土質調査資料はできるだけ多くあることが望ましく、他工事の過去の資料なども参考にしてより正確な把握を心がけるべきです。この場合に留意すべきことは調査場所で、特に土質変化が想定される場所においてはジャストポイントの調査資料が必要です。地層が傾斜していたり断層があったりする場所ではほんの数メートルの離隔でまったく異なる地層になっているケースもあります。そのため発注者から提示された土質資料が近隣のもので、土質の把握に不安がある場合は、現地のジャストポイントで追加の調査を行なうことも必要です。
また、設計書および事前調査資料などによって施工の概要は把握できますが、施工計画の立案、施工着手に当たっては現地の踏査が不可欠です。図面上での施工イメージと現地のイメージがまったく異なるケースがよくありますが、現地で得られる情報が反映されない施工計画は価値がありません。土質調査以外で必要と思われる調査項目としては、近接構造物(埋設物)、交通量や周辺環境、立坑および工事基地周辺などですが、いずれも事前の調査を怠ったためにトラブルになったケースがよく見受けられます。いいかえればこれらの事前調査を十分に行って、その結果の吟味を行っておけば、少なくともあとで悔やむようなトラブルを回避することが可能であるということです。
本稿ではトラブルを防止することに注目して、事前調査の重要性について各分野の方に留意点などを語っていただきたいと思います。
(文:中野正明 編集担当:舩橋透)
巻頭言 | みんなで力を合わせましょう アイレック技建(株)代表取締役社長 (公社)日本推進技術協会理事 飯田 敏昭 |
今月の推論 | 下水道事業と水道事業を対比すべきか? 下水道老異端児 |
総 論 | トラブルを回避し適切な施工を約束する事前調査の必要性 機動建設工業(株)関東支店長(本誌編集委員) 舩橋 透 |
特 集 | 事前調査におけるメタンガスの発生と超急曲線掘進工事における対応について (株)アルファシビルエンジニアリング施工本部技術部長 森田 智 |
推進工事トラブル回避のための事前調査の重要性について (株)イセキ開発工機建機事業本部(本誌編集委員) 佐藤 徹 |
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推進工事における事前調査および検討の重要性 地建興業(株)工務課課長 大石 真樹 |
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雨水幹線シールド工事における推進工法を活用した残置障害物撤去 南野建設(株)東京支店次長 山田 賢二 |
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既設構造物の近接工事における事前調査の重要性とトラブルの防止事例 (株)福田組東京本店土木部技術部担当課長 椎野 光保 |
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座談会 | 外的因子によるトラブルを回避する事前調査の重要性 【司会進行】 (株)熊谷組横浜営業所顧(本誌編集副委員長) 阿部 勝男 (株)エイト日本技術開発中部支社支社長(本誌編集委員) 田口 由明 横浜市環境創造局下水道管路部下水道事務所(北部)担当係長 仲田 朋生 機動建設工業(株)土木本部次長 矢萩 元彦 アイレック技建(株)非開削推進事業本部第一技術部副部長 福嶋 愼一 |
随 筆 | 博物館へ行こう ~マンガ編~ 長野油機(株)製造部資材課 山口 雅永 |
現場見学と 現場所長インタビュー |
呼び径3500超大口径管推進で最長距離445.5mを施工 佐藤・遠藤特定建設共同企業体石巻作業所所長(推進工事技士、佐藤工業(株)東北支店) 坂口 太郎 |
ゆうぞうさんの山紀行 | 第46回 九重山法華院温泉 藤代 裕三 |
年間総目次 | 2019年 Vol.33(平成31・令和元年1月号~12月号) |