発進・到達

2025年11月号 発進と到達技術の発展

 推進工事における発進・到達は、地山と立坑・マンホールの空間など異なるものの境目であり、トンネル工事において重要な部分であることは、周知の事実です。土質の漸弱性や地下水の有無などに大きな影響を受ける箇所であり、常に慎重な施工が求められます。また、発進・到達部は、他の構造物との接続箇所であり、接続するための構造検討や接続方法などの工夫も必要となる場所になります。
 推進工事の発進・到達で第一に求められる技術は、安全な施工の遂行になります。発進・到達部では、鏡切の際に発生する地山崩壊や地下水の大量出水への対策が必須であり、特に近年では大土被りでの施工が多くなっており、大土被りにおける発進・到達の安全施工のための技術進展が求められています。
 また、近年では、地下鉄や地下道、地下室、ライフライン等が重層構造のように輻輳し、現在もそれらのさらに深い位置や合間を縫うように地下施設が築造されており、さらには交通規制、周辺環境への配慮等から、立坑すら構築するスペースがなくなっています。このため、小立坑での発進・到達技術や既設構造物間への発進・到達技術が必要となっています。すでにそれらの技術は多く存在していますが、次第にトンネル位置が深くなっている状況や輻輳した構造物が障害となり地上部からの発進・到達への工夫が困難な状況が存在することから、それらの推進技術のさらなる進展が望まれています。
 発進・到達部における構造物との接続技術も重要な項目です。地震が多く発生する我が国では、この接続部への耐震構造が求められています。そのため、新しい接続方法や既存の発進・到達部の構造の変更技術も進展している状況にあります。
 本特集では、「発進・到達」におけるその施工時における技術と接続方法や構造などの最新技術などを事例とともにご紹介いただくことで、安全性の高い発進・到達工事の実施と工事の省力化へ参考になればと存じます。(編集担当:佐藤徹)

巻頭言 共感と調和
杉山 浩司
総 論 発進・到達の安全を確保する技術
新谷 康之
(公社)日本推進技術協会 常務理事
解 説 推進工事の補助工法に用いる地盤改良の新技術
稲川 浩一
日特建設㈱ 事業本部技術営業部担当部長
発進・到達ともに周辺環境に配慮した推進工事例〜貫入リング回転切削型接合方式〜
森田  智
㈱アルファシビルエンジニアリング 執行役員管渠推進部門副部長
貞永 桂子
㈱アルファシビルエンジニアリング 技術管理部積算課長
特殊な発進・到達条件で必要とされる技術について~到達立坑不要推進工法 アンクルモールシャトルの施工事例~
佐藤  徹
㈱イセキ開発工機 技術営業部
凍結工法を用いた刃口式推進工法による大深度アーバンリング立坑からシールドトンネルへの地中接続
下村 双葉
㈱奥村組 千代田幹線工事所工事担当
坂本 大毅
㈱奥村組 千代田幹線工事所工事主任
既設構造物への直接到達を可能にした外筒残置式推進工法
吉田 孝治
超泥水加圧推進協会 事務局長
安全性を高めるサポート・リング・カッタ(SRC)を用いた既設構造物到達
竹内 貴亮
ツーウェイ推進工法協会 技術員
随 筆 学生時代を振り返って
古賀 稜也
戸田建設㈱本社土木技術統轄部 土木ICT・AI 推進部推進2課
ゆうぞうさんの山紀行 第117回 磐梯猫魔ヶ岳登山
藤代 裕三
元横浜市下水道局

 

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