推進工法が我が国で最初に施工されてから今年で70年を迎え、長距離、急曲線などの技術困難な施工が可能になるばかりでなく、安全、確実、高品質な施工ができるようになってきました。これらの技術進歩には施工を担う専業者の掘進技術の進歩はもちろんですが、それを可能にするためのいろいろな技術の進歩がありました。
まず欠かせないのは推進管材料の高品質化です。推進工法は管路構造物である推進管を発進立坑から押して、地中を移動させて構造物を完成させる技術です。推進管は施工中に周辺の土圧や水圧を受け、推進ジャッキからの推進力を受けながら移動します。当然このような推進管の受ける荷重は時々刻々変化します。継手部の状況も変化します。開削工法に使用する埋設管と比較して、あるいはシールド工法に使用するセグメントと比較して、推進管は複雑な外力を受けつつ継手部の状況も変化します。そのような特殊な施工環境であるため、推進管には特に高品質な性能が要求されます。
さらに、長距離施工となると推進抵抗の軽減が重要なカギになります。摩擦抵抗の低減、孔壁保持効果の向上、地下水で希釈されない品質、長期間にわたって経時変化をおこさない安定した滑材の開発が行われ、注入方法も先頭管付近での注入だけでなく、後続の管列からの自動注入技術などが開発されてきました。
曲線施工では高品質の推進管の開発ともに、掘進機に追随する後続の管列の追随性を向上させて、なおかつ継手部で折れ曲がりながら推進力を伝達するための推進力伝達材の開発が行われてきました。
曲線施工などで高精度を確保するための測量技術も欠かすことのできないもので、施工中は管列全体が移動するために、管内に固定の引照点を設けることができないハンデを克服して毎回自動的に発進立坑の引照点から座標測量を行う自動測量の開発や、常時の掘進機の姿勢監視のための小型、高精度のジャイロコンパスの開発なども推進工法の発展に寄与してきました。
また、そのほかでは管内換気、連絡通信設備、管内通行の改善、照明などの安全対策技術も欠かせないものです。
本特集ではそのような長距離曲線施工などの技術困難な推進工法を支える様々な技術について、自動化などをキーワードにそれぞれの分野での開発経緯や現状、今後の展望などを語っていただきます。
(編集担当:中野正明・舩橋透)
巻頭言 | 労働制度と労働環境の改善から女性の活躍を推進しよう 五洋建設(株)土木部門土木営業本部副本部長兼第二営業部長((公社)日本推進技術協会理事) 河上 清和 |
今月の推論 | 上下水道の民営化と推進工事 全日本発注者団体連合協議会副会長 |
総 論 | 高品質な長距離・曲線推進を支える大中口径管推進技術 (公社)日本推進技術協会技術委員会講座部会長 西田 広治 |
特 集 | NUC工法による高品質な長距離・曲線推進技術 NUC工法協会事務局長 高橋 正二 |
アルティミット工法 坑内作業の省力化と無人化による高品質な長距離・曲線技術 アルティミット工法協会 小森 恭司 |
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CMT工法の超長距離推進の取り組み CMT工法協会 木下 貴義 |
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推進力低減装置による高品質な長距離・曲線推進技術 ジオリード協会会長(株)ウイングス代表取締役 脇田 清司 |
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超流バランスセミシールド工法における長距離・L字急曲線施工の対策 (株)アルファシビルエンジニアリング技術部主任 池田 裕治 |
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泥濃式ラムサス工法の現状と礫質地盤における長距離推進の施工事例 戸田建設(株)・(株)水清建設特定共同企業体 戸田建設(株)東北支店土木工事1部工事2室現場代理人 高浜 誠 (株)水清建設施設部課長代理主任技術者 石井 道久 サン・シールド(株)工事部次長 河田 倫 |
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随 筆 | 10年目を機に、これまでを振り返る 戸田建設(株)本社土木工事技術部技術3課 真鍋 啓輔 |
今までの人生を振り返って 戸田建設(株)本社土木設計部設計2課 浅田 俊平 |
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