下水道以外の事例

2017年11月号 多様な断面で多様な分野に適用される推進工法

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 推進工法は構造物そのものである推進管を発進立坑から押して、地中を移動させて構造物を完成させる技術です。推進管は施工中には推進力および周辺の土圧や水圧を受けますが、完成構造物としては推進力の影響を削除して土圧および水圧のみを考慮すればよいものです。そのためヒューム管をはじめとする円形管が力学的には優位であり、実際施工されているほとんどの断面形状は円形です。しかし完成後の構造物の使用目的によっては、円形より矩形やその他の形状のほうが効率的な場合があります。また土被りの制約や近接埋設物との離隔を確保するためには円形管ではなく、その他の形状が要望されるケースなども増えているようです。
 推進管の完成後の用途としては雨水、汚水、農業用水などの液体を搬送する流路や都市ガス、天然ガスなどの気体を輸送するパイプラインのさや管などがあります。これらの用途には総じて力学的優位性だけでなく円形管が使用目的に対する合理性からも優位ですので、ヒューム管、塩ビ管、鋼管、ダクタイル管などが圧倒的に多く使用されています。その他の用途として古くからあるものとしては電力洞道、共同溝、地下道など複数の管を共同で収納したり人道として使用したりするための函きょがあります。また、最近では道路や鉄道路線の分岐合流部などの大規模地下空間構築の先行土留め(支保工)としての用途なども注目を浴びています。これらの用途には矩形やアーチ形状などの断面が、その使用目的に合致するとともに土被りや近接埋設物への影響などでも優位なケースが多くあります。また、1本の推進管は円形ですがそれを縦横に連続して施工することによって全体として大規模地下空間の先行土留めとして使用するケースもあります。
 これから数年をかけて2020年東京オリンピック開催に向けた交通アクセスの整備やリニア新幹線などの大プロジェクトが本格化しますが。推進工法がこれらの大規模地下空間築造に寄与するためには、その用途に応じた断面形状、断面配置を提案してその技術をPRしなければなりません。
 今月号では「多様な断面で多様な分野に適用される推進工法」と題して、矩形函きょをはじめとする円形以外の断面形状の推進技術やパイプルーフなどの複数管で地下空間を保持するための推進技術を紹介するとともに、その問題点、要求事項などを抽出して、今後のさらなる推進技術の適用性の拡大を図りたいと思います。
(編集担当:中野正明)

巻頭言 「新下水道ビジョン加速戦略」と民間企業の役割
(株)奥村組取締役常務執行役員土木本部長(当協会副会長)
小寺 健司
今月の推論 建設業界の「働き方改革」意見に違和感
傍若無人
総 論 多様な断面で多様な分野に適用される推進工法
九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門教授
島田 英樹
(株)イセキ開発工機建機事業本部副本部長
佐藤  徹
解 説 高速道路下横断トンネルの非開削施工 ~土被り0.63m、トンネル延長53mのアンダーパスをSFT工法により施工~
(株)奥村組東日本支社東北支店土木第2部豊地SFT工事所
亀井 寛功
(株)奥村組東日本支社東北支店土木第2部豊地SFT工事所現場代理人
川嶋 英介
曲線函体推進工法による通行止めを回避したトンネル路面変状対策
機動建設工業(株)土木本部
矢萩 元彦
(株)熊谷組土木事業本部トンネル技術部
稲田 正毅
密閉型大断面ボックス掘進機を用いた地下空間構築技術
(株)アルファシビルエンジニアリング取締役施工副本部長(技術士RCCM)
松元 文彦
地盤切削JES工法による玉石混り盛土地盤の施工
鉄建建設(株)土木本部地下・基礎技術部
山田 宣彦
東日本旅客鉄道(株)上信越工事事務所安全企画室
石田 将貴
東日本旅客鉄道(株)上信越工事事務所新潟工事区
吉田 直人
鉄建・植木組共同企業体JV塩沢作業所
樫村 展明
設計者から見た自転・公転型矩形掘進機の優位性
(株)藤田油機技術営業部部長
永井 博也
国道6号下大断面小土被りアンダーパスの構築 ~推進工法用分割式矩形函きょの施工事例~
ゼニス羽田(株)本社営業部営業設計部
後藤 伴行
随 筆 これから建設業界を目指す若者達へ「終わらない現場はない!」
ヤスダエンジニアリング(株)工事部
羽部 孝信
先達に学ぶ温故知新 第二回 推進に出会い50年 その2
前(株)推研代表取締役会長
蒲田  洋
ゆうぞうさんの山紀行 第21回 晩秋の妙高山
藤代 裕三
俳句会便り 六十一回 中本郷顔記念「東雛」俳句会便り

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