下水道以外の事例 改築

2017年9月号 震災復興

 昨年(平成28年)は、4月14日の前震、同16日の本震による「熊本地震」が発生し、多くの人命を失いました。これに加え、6月にはその被災地を含む西日本地方に豪雨が来襲しました。また、9月には台風16号等による被害も発生しています。北海道においても6月、7月に記録的な豪雨が発生、8月に入り台風7号、11号、9号と3つ立て続けに上陸しました。8月末には台風10号が過去に見ない動きを見せ、史上初めて太平洋から東北地方に上陸し北上、農地、農業施設のほかインフラ等にも大きな被害をもたらし、関東地方では中小河川や下水道からの溢水が頻発しました。今年7月の九州北部豪雨では流木が氾濫被害を拡大させました。このように近年は、繰り返す自然の猛威、自然との共存の難しさを感じ、災害大国「日本」であることを再認識させられる機会が非常に多くなったように思います。
 さて、代表的な地震被害を振り返りますと、今年は、平成7年1月17日に発生した「兵庫県南部地震」から22年、平成16年10月23日に発生した「新潟県中越地震」から13年、平成23年3月11日に発生した「東北地方太平洋沖地震」から6年にあたる年となります。昨年発生した熊本地震はもちろん、東日本大震災についても官民が連携・協力しインフラの復旧・復興が進められていますが、地域住民の方にとってはこれからの長い道のりのほんの一部に過ぎないものです。
 本号では、巻頭言において官側を代表し熊本市上下水道事業管理者の永目様に「復興元年」の取り組み、意気込みを語っていただきました。そして特集では上下水道などインフラの復旧方針、復旧工法の採用事例について紹介します。その着眼点は、次のように区分しました。
 1)災害調査の早期化
 2)液状化被害の応急対応
 3)管路施設の本復旧(原型復旧)
 4)津波リスクの回避(震災復興事業)
 まず、災害復旧の早期化については、東日本大震災までは復旧調査のルールが統一されていないことによる調査や書類策定の手戻り等、少なからず現地での混乱を招いていました。熊本地震では、この改善が図られ、また関係者の蓄積された経験により、短期間に多くのリソースを投入し、災害復旧調査を早期化することができました。一方で、新たな教訓や課題も得られました。このことについて事例紹介したいと思います。
 次に、東日本大震災では関東地方を中心に広域の液状化被害が発生し、地下に埋設されたライフラインも破断、蛇行、浮上、継手離脱等の被害が生じました。埋設深が大きい管路は小さい管路に比べ被害が軽微であったようですが、マンホールも含め管路施設では多くの機能支障、道路陥没等の二次災害の危険が確認されました。これまで、埋設管路の埋戻し部の液状化被害が注目されていましたが、広範囲の被害は復旧に時間を要するため、応急復旧工法の選択が重要となります。
 その本復旧にあたっては、原形復旧が基本となります。この場合の施工法には、開削工法、推進工法、管更生工法等が用いられ、マンホールとの接続部や管きょの継手には挙動への追従性、土砂の流入防止等が配慮されました。
 また、東北地方をはじめ太平洋沿岸部では津波被害を受け、抜本的な対策は高台移転など津波を避ける対策に拠らざるを得ず、その復興には長期を要しています。このような面的な対策では、上下水道の新規整備が必要となっています。
 一概に「震災復旧・復興」と言っても、被害の形態や規模により、様々な手法が選択されることとなりました。大規模な被害を受けた地域では原形復旧だけではなく、バックアップ機能の確保などを含めた対策を講じています。このような対策の中では、推進工法も採用され、復旧・復興に貢献しています。
(編集担当:田口由明)

 

巻頭言 熊本市上下水道事業 災害に強いまちづくりを目指して
熊本市上下水道事業管理者
永目 工嗣
今月の推論 加速戦略は管路が担う
知恵須納人
総 論 「下水道事業における災害時支援に関するルール」の改定について
(公社)日本下水道協会技術研究部技術指針課
本田 康人
仙台市における下水道災害復旧と復興事業について
仙台市建設局下水道経営部下水道計画課調整係長
千葉  守
浦安市における液状化被害とその対応
浦安市都市環境部下水道課長
堀井 達久
解 説 災害復旧の早期化 ~災害査定時の施工法選定について~
熊本市上下水道局下水道整備課
神崎 陽介
(株)日水コン
山本  整
リバースエース工法の震災復旧施工事例
アイレック技建(株)非開削推進事業本部営業部
石井 英彦
災害復旧に威力を発揮する仮排水工法パスカル君
仮排水工法協会事務局
銅木 洋治
随 筆 みちのく・津軽
長野油機(株)製造部資材課
山口 雅永
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