推進工法は、同径のシールド工法より施工難易度が高く、様々な面で高度な技術が要求されます。シールド工法はセグメントを組み立てたのち、テールボイドを裏込め材で充填し、固結すればセグメントが安定します。
一方、推進工法では、施工中においてフレキシブルな推進管列が絶えず地中移動するため、大きな推進力が波動的に掛かり、管体の軸方向と断面方向に複雑な外力が作用します。このため、推進管の種類はJSWAS(日本下水道協会規格)で規定されている標準管においても、様々な施工条件に対応するため、強度、継手性能の違いなどから多種に及び、また、全国ヒューム管協会や塩化ビニル管・継手協会規格のほか、製造協会規格を含めると膨大な種類となっています。これらの多くは、推進工事70年の歴史の中で、発注者の多様な要望にメーカ側が応えたものです。
しかし、中にはJSWASの中押管のように施工時の使用を極力控えているものや、規格化されていても殆ど製造を行なっていない、いわば死に体寸前の推進管があることも事実です。また、開発はしたものの市場需要の低迷やPRの不足などから、お蔵入り状態となっているモッタイナイ推進管も存在しています。
本特集では、推進工法用の剛性管、撓性管の管材が規格化された背景や変遷、現行規格の概説と特長、多様化する用途(貯留・内圧、超大口径等)とともに、JSWAS推進管のほか、施工環境や施工条件によって各協会が独自に規格・製造している推進管にも光を当て、その特長と特殊条件下の採用実例、製造実績とトレンド、さらにはトラブル事例や今後の課題等についても踏み込んでいます。また、主にユーザを対象に適正な管種や管材の選定に資することを目的とし、「座談会」も掲載されています。
本特集が、設計に携わる自治体やコンサルタント職員にとって、管材を選定するに当たっての一助となれば幸甚です。
(編集担当:阿部勝男、人見隆)
巻頭言 | 推進技術の持続的発展に向けて アイレック技建(株)代表取締役社長 飯田 敏昭 |
今月の推論 | ご朱印とマンホールカード 智恵須 納人 |
総 論 | (公社)日本下水道協会における下水道用資器材規格と推進工法用管および内水圧管の対応について (公社)日本下水道協会技術研究部参事兼規格検査課長 友部 秀久 |
推進管アラカルト ~要求性能からみる推進管の選定~ 全国ヒューム管協会技術委員長 村崎 裕一 |
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解 説 | ニーズを先取りした製品群 日本ヒューム(株)技術部 三岡 善平 |
推進管は内圧対応の時代へ ─内圧対応推進管の誕生の背景とその概要─ ゼニス羽田(株)本社営業部 川合 克実 |
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SR推進管、CSパイプ、EX推進管の特長と実績、今後の展開と課題 中川ヒューム管工業(株)技術営業部 佐久間 啓 |
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MAX推進管シリーズの特長と実績、今後の展開と課題 栗本コンクリート工業(株)東京営業所 竹澤 真明 |
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受け継がれるWジョイント管の継手とその展開 藤村ヒューム管(株)技術開発本部技術営業部 吉本 勝彦 |
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時代のニーズより生まれた超大口径PC推進管 超大口径PC推進工法研究会事務局 植竹 克利 |
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下水道施設の防食材料コンクリート用抗菌剤「ゼオマイティ」 (株)シナネンゼオミック営業開発部課長 当麻 幸広 |
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座談会 | 管メーカ覆面座談会「推進管アラカルト」~多様なニーズにチャレンジする推進管~ (株)熊谷組首都圏支店顧問(横浜市OB)本誌編集副委員長【進行役】 阿部 勝男 |
随 筆 | 建設産業への機会と興味の変化 中川ヒューム管工業(株)総務部 高濱 直紀 |
NAGANO 1998 ~Olympic legacy~(2) 長野油機(株)製造部資材課 山口 雅永 |
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先達に学ぶ温故知新 | 第六回 推進工法とともに歩んだ40年 その3「豪州での施工」 元(株)日本下水道管渠推進技術協会常務理事 石橋 信利 |
ゆうぞうさんの山紀行 | 第25回 野沢スノートレッキング 藤代 裕三 |