
本誌で取り扱っている推進技術は、都市部の下水道整備を中心に発展してきました。従来は開削工法で管路の設置を行っていましたが、これには相応の作業スペースや地上部の道路規制等が必要です。特に都市部では用地逼迫や交通量の増大から制約条件が厳しくなり、非開削工法のニーズが高くなったことで、これに対応すべく採用されたのが推進技術といえます。以降、下水道管路だけでなく、上水道、電気、ガス、通信などのパイプライン整備に数多く採用されてきました。長距離・大断面・急曲線の実績も年々増えており、今後もインフラ整備における重要な役割を果たす技術として発展を続けることでしょう。
推進工事では一般的に円形断面が採用されています。これは、密閉型掘進機においてカッタが回転することで円形断面が基本となり、それに加え構造物として土圧および水圧に対抗するには円形管が力学的に優位であるためです。上下水道に関しては、管内水理特性の面からも円形が有利とされています。しかし近年では、推進工事の用途拡大や構造物完成後の使用目的の変化に伴い、円形ではない形状を求められるケースや、その方が効率的なケースが増えてきました。例えば、道路アンダーパスにおいて非開削推進技術が普及してきましたが、この場合は構造物内を人や車両が通行するため、床面がフラットな形状が求められます。また、道路や鉄道において大規模地下空間を構築する場合の先行土留めとして推進工法が採用される工事も増えています。この場合、複数の推進管を連結することで大きな断面を構築しますが、1本1本は円形でも全体として非円形の断面を構築することが可能です。このように、社会インフラのニーズに伴い、推進工法も多様な断面に対応できるように進化してきました。
今月号では、「多様な断面の築造」と題して、矩形函きょをはじめとした円形ではない断面形状の推進技術や、パイプルーフ等を採用した地下空間の築造などについて紹介します。推進工法の適用拡大について、断面形状という観点からその現状と将来の可能性を確認していただけると幸いです。(編集担当:山長聖和)
| 巻頭言 | 大阪・関西万博がこどもたちに魅せたもの 木井 敦夫 五洋建設㈱ 土木部門土木営業本部第二営業部長 (公社)日本推進技術協会理事 |
| 総 論 | 地盤の緩み検知による線路下横断工法の情報化施工システムの開発 仲山 貴司 (公財)鉄道総合技術研究所 構造物技術研究部 トンネル・上席研究員GL 山下 雄大 (公財)鉄道総合技術研究所 構造物技術研究部 トンネル・研究員 |
| 矩形推進における周辺地山への影響 笹岡 孝司 九州大学大学 工学研究院准教授 島田 英樹 九州大学大学院 工学研究院教授 濵中 晃弘 九州大学大学院 工学研究院准教授 |
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| 解 説 | 標準より高さを縮小したエレメントを用いたJES工法の施工事例 本柳 亮 鉄建建設㈱ 土木本部地下・基礎技術部 課長 水野 元 ㈱ジェイテック 技術企画本部 エンジニアリング営業部 担当部長 |
| 特殊推進工事への取り組み ~計画から施工に至る経緯~ 松元 文彦 ㈱アルファシビルエンジニアリング 代表取締役社長兼施工本部長 |
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| パイプルーフ工法による多様な地下空間構築 佐藤 徹 ㈱イセキ開発工機 技術営業部 |
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| 協会からのお知らせ | 建設キャリアアップシステム(CCUS)都市トンネル技能者の能力評価を開始しました 新谷 康之 (公社)日本推進技術協会 常務理事 |
| 随 筆 | 話題のインフラツアーに参加20~新東名高速道路~ 山口 雅永 |
| ゆうぞうさんの山紀行 | 第120回 雪の天城山 藤代 裕三 元横浜市下水道局 |