土質管理 環境

2025年4月号 土質変化への対応

 我が国の地質構造は、多くの火山活動による堆積土や降雨量の多いことによる河川氾濫や地滑りの影響、また、海に囲まれた環境からの浸食などの地理的、気候的な事由により、長い年月をかけて極めて稀で複雑な地層で形成されています。
 推進工法においては、対象区間の土層構成やN値、礫率、礫径、地下水などの状況が工法選定に大きく影響しますが、短スパン工程の場合や敷設深さに比較的、自由度がある圧送管を主体としたインフラ設備では、割合、土質変化の少ない土層を設定することも可能であると思います。
 しかしながら、経済性を考えると、無制限に深い位置に埋設したり、極端に遠回りすることは現実的ではありません。また、下水道管きょの場合は自然流下を基本としており、上下流の接続状況から縦断線形に制約がある場合がほとんどで、どうしても決まった条件の中で設計することになります。
 そのため、推進土層の土質を選べない場合が多く、加えて、推進工程の長距離化が著しい現在においては、さらに複雑な互層地盤条件での設計、施工とならざるを得ない状況にあると考えます。
 一般的に推進工法の掘進機は、推進区間内の土質変化に応じてカッタヘッド等の種別変更は可能ですが、前述のとおり複雑な互層地盤に対応することは実情困難であり、あらかじめ境界面が想定されても施工環境条件的に立坑築造ができない場合が多いため、対象区間の中で最も厳しい土質条件に対応する機種やカッタヘッドを選定することになります。
 このため、昨今の長距離推進のニーズの高まりに呼応し、あらゆる土質に対応可能な掘進機やカッタヘッドの開発も取り組まれています。
 そこで、本特集では、推進工法における互層地盤への対応方法について、設計、施工各々の立場での課題と解決のための工夫や対策の実例ならびに、最新の推進技術を紹介します。本特集が、読者の皆様にとって推進工法の計画設計や施工方法選定の参考となり、社会インフラ整備に伴う課題解決の一助となることを期待します。(編集担当:今田達朗)

 

巻頭言 無くてはならぬ建設産業
山崎  晶
㈱熊谷組顧問(公社)日本推進技術協会理事
総 論 非開削工法における地質リスクの簡便な抽出手法
鈴木 敬一
(公財)深田地質研究所 理事・上席研究員
土質変化への対応
中野 正明
(公社)日本推進技術協会 会長
解 説 土質の変化への対応 ─アルティミット工法─
須藤  洋
アルティミット工法協会
泥濃式推進工法(超流バランス式)における複合地盤への対応について
森田  智
㈱アルファシビルエンジニアリング 技術部部長
貞永 桂子
㈱アルファシビルエンジニアリング 技術部課長
土質変化に柔軟な対応が可能なハイブリッドモール工法
武村  秀
アイレック技建㈱ 非開削推進事業本部
超泥水加圧推進工法による土質情報から読み解く想定土質への対応策と施工事例
吉田 孝治
超泥水加圧推進協会事務局
随 筆 これからの建設業を担う若者たちの今
渕山 美怜
三井住友建設㈱
土木本部土木設計部 土木設計グループ
ゆうぞうさんの山紀行 第110回 葛城山・発端丈山ハイク
藤代 裕三
元横浜市下水道局
俳句会便り 第九十一回 中本郷顔記念「東雛」俳句会便り

 

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