発進・到達

2026年1月号 海外展開

 我が国の国内建設投資は、高度経済成長期に整備されたインフラの老朽化対策や防災・減災対策、都市部の再開発など、一定の需要は存在するが、人口減少と少子高齢化の進展により、中長期的には市場規模の縮小が予測されている。
 非開削のトンネル建設工法である推進工法は、地下インフラが錯綜する都市部において下水道管渠工事を中心に積極的に採用されてきたが急激に新規需要が減少してきており、新たな活躍の場として海外市場が注目されている。
 このような背景のもとで15年ほど前から推進工法の海外展開の取組みが始まっている。ベトナムやインドネシア、カンボジア、フィリピンでは、国土交通省や下水道グローバルセンター(GCUS)東南アジア委員会など官民連携による推進工法普及活動が進められベトナムやインドネシアでは本邦企業の大型推進工事の受注に成功している。
 しかし、海外での仕事には様々な課題が存在する。

①法制度・商習慣・文化の違い
 例えば、契約条件や慣行が日本とは大きく異なり、当該国での契約条件などを熟知する必要がある。また、建設に関する許認可プロセスが日本人にとっては複雑で時間を要する場合がほとんどである。さらに現地の労働法規の運用や労働者との関係構築が重要である。
②カントリーリスク
 政権交代や法改正、経済状況の急変などがプロジェクトに大きな影響を与える。また、為替レートの変動により、採算性が大きく悪化するリスクがある。
③プロジェクトマネージャーの確保
 海外プロジェクトを率いることができる経験豊富な人材は限られている。海外プロジェクトの成否はプロジェクトマネージャーの実力が大きく影響する。
④他国企業や現地企業との価格競争
 価格競争力のある現地企業や、政府の強力な支援を受ける他国企業との価格競争は深刻な課題である。

 本特集号では、これらの高い壁を乗り越えてプロジェクトの成功を勝ち取った企業やこれを様々な方法で支援した機関や公的団体の取組みを紹介する。また、文化や習慣の違いの中で、日本国と外国とのあいだを調整し本邦企業の受注に重要な役割を担った政策アドバイザーの座談会を開催し企業の海外活動に必要なポイント紹介する。本特集号が海外展開を検討している企業、既に展開している企業など関係各位の参考になることを期待している
(編集担当:森田弘昭)

巻頭言 強靭で持続可能な下水道の構築に向けた取組
石井 宏幸
国土交通省 上下水道審議官
今月の推論 下高市首相の「日本成長戦略会議」を注視せよ
北極星
年頭所感 中谷 泰之
(公社)日本推進技術協会会長
㈱奥村組取締役常務執行役員土木本部長
総 論 下水道分野の国際展開の取組と今後の展望
吉田 敏章
国土交通省 水管理・国土保全局
上下水道企画課 上下水道国際室長
日本下水道事業団の海外展開支援
猪木 博雅
(地共)日本下水道事業団 国際戦略室室長
解 説 推進工法の海外展開におけるGCUS 東南アジア委員会の活動
森田 弘昭
下水道グローバルセンター 東南アジア委員会委員長
日本大学教授
カンボジア・フィリピン推進工法基準策定の経緯と進捗
赤坂 和俊
㈱日水コン 執行役員コンサルティング本部
海外事業部長
横浜市の下水道事業における国際技術協力の概要
窪田 明仁
横浜市下水道河川局
マネジメント推進課担当係長(国際担当)
大阪市における官民連携による海外展開支援
金井 容秀
大阪市建設局下水道部
下水道資源循環課・課長代理
日越大学を通した下水道分野の学術交流
春日 郁朗
東京大学 先端科学技術研究センター准教授
ベトナム進出のこれまでの歩み 今後の展望
安田 一成
ヤスダエンジニアリング㈱ 専務取締役
インドネシア共和国ジャカルタ下水道工事Zone1の現状報告
門前 文浩
㈱熊谷組 国際本部インドネシア営業所長
推進技術海外普及事業報告 インドネシア バンドン工科大学技術セミナー(SIBE 2025)
中野 正明
(公社)日本推進技術協会 顧問
座談会 ベトナムにおける推進工法の普及活動に貢献した下水道政策アドバイザー(JICA 専門家)
森田弘昭・津森ジュン・岡安祐司・若公崇敏・茨木誠・田本 典秀
投 稿 アルティミット工法による巨石土対策 ─並走する2路線の推進施工事例─
中川  弥
坂川建設・大北久保建設 特定建設工事共同企業体
大蓮寺川放水路整備工事作業所所長
原田 水胤
機動建設工業㈱ 北陸支店 工事部次長
協会からのお知らせ 推進工事技士資格更新講習で初めてのウェブ講習を実施しました
新谷 康之
(公社)日本推進技術協会 常務理事
随 筆 くだけた話
重盛 俊樹
ベビーモール協会事務局長
ゆうぞうさんの山紀行 第119回 冬の瑞牆山
藤代 裕三
元横浜市下水道局

 

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