今回の特集は、トラブルに焦点をあてた特集です。トラブルは、解決しなければ進展が期待できない状況であり、未然に防止することが重要です。
しかし、未然に防止するということはトラブルがどのように展開し、その芽を摘み取っていくことです。場合によっては解決できないまでに発展することもあります。
推進工事におけるトラブルは、大きく三つの要因が考えられます。
ひとつ目は土質によるもので、地下空間に構築する場合には必ず対象土質を把握しそれに見合った工法を選択しなければなりません。その選択を間違えたり、想定しない急激な土質変化が生じた場合にトラブルが発生したりします。
ふたつ目は、機械的な故障等、設備不良によるものから発生するトラブルです。
三つ目は、人的トラブルです。推進工事において、事象の大小にかかわらずトラブルが起これば施工者として大きな損害と信用の失墜に発展してしまうため、これまでは多くは語られてきませんでした。しかし、そのトラブルを解決してきた積み重ねにより、今日の推進工法が存続していることを理解していただきたいと思います。
近年、地下ライフラインでは、地下シールド工法や山岳トンネルといった都市土木では花形で安全安心な地下空間を構築してきました。また、推進工事では、より小さく複雑で狭隘な施工条件化でも対応し進化してきました。このところ、日本最大級の大断面シールド工事において大きなトラブルが発生した事象を耳にします。日本のシールド工法の安全神話が揺らぐような出来事も発生しているようですが、我々推進工事にかかわるものとして、推進工事は、ちょっとしたことでもトラブルに発展してしまうので、さらなる安全・品質・施工管理を行い、トラブルを未然に防止しなければなりません。
本特集では、推進工事において、いろいろなトラブルが進展した場合の対処や解決策等を紹介し、トラブルを解決することによって進化発展してきた工法や事例等、工事はトラブルと隣り合わせであり、一瞬の気の緩みや判断ミスによっては取り返しのつかないトラブルに発展してしまうこと等を理解してもらい、推進工事がより安全安心な工法であること、今後、さらに進化していくことを期待したいと思っています。
(編集担当:舩橋 透)
巻頭言 | 循環のみち ㈱奥村組取締役常務執行役員土木本部長 (公社)日本推進技術協会副会長 小寺 健司 |
今月の推論 | いちばん大事な感染対策 全日本発注者団体連合協議会副会長 |
総 論 | トラブル未然防止の妙手「リスクアセスメント」 (公社)日本推進技術協会研究部長 金田 則夫 |
“トラブルを未然に防ぐ”には 機動建設工業㈱関東支店長(本誌編集委員) 舩橋 透 |
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解 説 | トラブル回避のカギは事前準備 ㈱アルファシビルエンジニアリング技術部部長 森田 智 |
推進工事におけるトラブル事例とその対策 機動建設工業㈱関東支店営業課課長 荒木 大介 |
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トラブル事例から見るその種類と対処方法 南野建設㈱技術部部長 高橋 正二 |
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推進工事におけるトラブルとリスク管理 ㈱福田組土木部技術企画部 石塚 千司 |
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座談会 | トラブルを未然に防ぐ 機動建設工業㈱顧問(元横浜市) 阿部 勝男 横浜市環境創造局下水道管路部管路整備課長 黒羽根 能生 ㈱エイト日本技術開発防災保全事業部執行役員事業部長 田口 由明 機動建設工業㈱名古屋支店工事次長 小森 大輔 アイレック技建㈱非開削推進事業本部第一技術部副部長 坂元 幸一郎 ㈱イセキ開発工機建機事業本部副本部長 佐藤 徹 |
随 筆 | 話題のインフラツアーに参加 2 〜神田川・環状七号線地下調節池〜 長野油機㈱製造部資材課 山口 雅永 |
下水道展’21大阪 取材レポート |
推進技術関連ブース見学ダイジェスト |
編集委員のいち押し! | |
ゆうぞうさんの山紀行 | 第68回 10月の甲斐日向山 藤代 裕三 |
俳句会便り | 第七十七回 中本郷顔記念「東雛」俳句会便り |
合格者発表 | 2021年度推進工事技士試験合格者発表 |