日本の推進技術は、昭和23年(1948)国内初の工事を行って以来、今日までの70余年の間、多様かつ高度な技術を積み上げ発展してきました。特に昭和30年代に高度経済成長期を迎えたことで、工業化が急速に進み、それに伴い都市部の人口も急増したため工業排水や生活排水が増大し、公共水域の汚染が深刻化したことを受け、昭和45年(1970)下水道法改正時に公共水域の水質保全に係る一項が加えられました。これにより下水道整備が加速化したこともあり、推進技術は急速な技術の進歩・発展を遂げ、今日においては長距離推進や急曲線施工に対応できる工法に至っております。
また、推進工法は下水道分野に限らず、私達の生活に欠かせない電気・ガス・上水道・通信網といったインフラ整備の構築、また軌道下および道路下における矩形推進等、現在様々な分野で活躍を遂げています。
推進工法は、開削工法と違い必要最小限のスペースの中で施工が可能とされる工法であり、工事における交通渋滞や施工機械による振動・騒音を抑えることができ、市街地等における施工に最も適した工法です。開削工法はすべての土質に対応することが可能ですが、推進工法は土質条件や地下水の有無、透水係数、礫径、礫の混入率といった条件のもと、工法が選定されることもあり、事前調査における施工路線の情報は工法の選定を含め、円滑な施工を行う上で重要なポイントとなります。
本号のテーマは「土質の変化に対応」と題し、互層地質における施工上の工夫、対策等について執筆をいただいております。工事を行う上で重要なポイントとなる土質条件、本号の特集が今後の推進工事において、様々な課題を克服していく一考として、一読いただければ幸いです。
(編集担当:植木貴幸)
巻頭言 | 下水道はインフラのエッセンシャルだ! 日特建設㈱取締役執行役員副社長 (公社)日本推進技術協会理事 屋宮 康信 |
今月の推論 | とがった人材に輝いてほしい 時来りて語る者 |
総 論 | 土質変化への対応 (公社)日本推進技術協会会長 機動建設工業㈱代表取締役社長(本誌編集参与) 中野 正明 |
特 集 | 礫質土と軟弱粘性土の層境推進工法の設計事例紹介 (株)エイト日本技術開発防災保全事業部・プロジェクトマネージャー 二木 康裕 |
互層における設計手法と事例 (株)日水コン下水道事業部東部計画管路部技術第三課チーフエンジニア 千葉 智晴 (株)日水コン下水道事業部西部計画管路部技術第二課課長 宮崎 裕 (株)日水コン下水道事業部東部計画管路部技術第二課課長 小野 智義 |
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複数の土層へ対応する設計手法と事例について 日本水工設計(株)東京支社下水道二部管路設計課課長 越石 博行 |
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エースモール工法における互層地盤でのトラブルリスクを回避するローラⅠ型カッタヘッド アイレック技建(株)非開削推進事業本部第二技術部 福嶋 愼一 |
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泥水式掘進機における「全土質対応型掘進機」の特徴と施工事例 (株)イセキ開発工機建機事業本部副本部長兼建機営業部長(本誌編集委員) 佐藤 徹 |
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アルティミット工法における多様な土質変化への対応 機動建設工業(株)関東支店営業課課長 荒木 大介 |
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巨石砂礫層から砂層に変化する互層の推進事例(想定外の土質にもチーム力で対応) サン・シールド(株)工事部副部長 河田 倫 |
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土質の変化に対応する複合式推進工法(ハイブリッドモール工法) ハイブリッドモール工法協会事務局 虻川 耕太郎 |
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随 筆 | マンホーラー マンホールサミットin池田編 長野油機(株)製造部資材課 山口 雅永 |
ゆうぞうさんの山紀行 | 第57回 晩秋の石老山 藤代 裕三 |
俳句会便り | 第七十三回 中本郷顔記念「東雛」俳句会便り |