近年、地球温暖化に伴う気候変動の影響で、日本各地で大雨等による浸水被害が発生しております。
日本は梅雨をはじめとして多雨地域であるわけですが、事前に予知できない突発的なものへと雨の降り方が変わってきたというのが皆さんの印象でしょうか。迷走する台風、線状降水帯、そしてゲリラ豪雨といったことで、従来の規模を上回る雨、予測困難な雨が降り注いでいます。その結果、河川の洪水をはじめとして、対策の追いつかない都市では雨水が街に溢れるなど、様々な被害の状況がメディアを通して映し出されることが多くなった今日です。
特に都市部では雨水が路上に溢れ、地下街にまで流入するなど、行き場を失った雨水は、内水氾濫といった形で私たちの生活を脅かし、都市機能を奪いかねません。そのような中、雨水による危険を効果的に防ぐため、一時貯留や既設の管路を活用など効率的な手法も含めハード・ソフト共に対策が強化されております。
都市部における道路交通状況や輻輳する地下インフラを考慮しますと、貯留管や既設ストックを有効活用するためには、比較的小さな立坑から長距離・曲線敷設が可能な推進工法による貯留施設や管路の構築が現況に最も適した施工方法の一つであるといえます。そのような状況の中、推進工法に使用する管にも内水圧に対応した推進管のニーズが高まってまいりました。
現在、(公社)日本下水道協会において下水道推進工法用鉄筋コンクリート管(JSWAS A-2)の規格改正作業が行われております。今回の改正では推進管に内圧規格が追加されることが主な改正内容になる模様です。鉄筋コンクリート管に内圧管が加わることで、管種選定の幅が拡がり、これまで以上に経済的な管路構築が可能になるものと思っています。推進管に内圧が作用する場合、管の内外から圧力が作用するので力が相殺されるように思われがちですが、実態はそうではありません。外側からの荷重に加えて、内水圧による内圧荷重が作用することで管にはより大きな応力が生じます。したがって、より強度の高い管種が必要になるケースが多く、大深度、高水圧、高土圧といった様々な設計条件に応じた適材適所の管材の適用が重要になります。
本号では、特に難度の高い貯留管の推進工事例などを都市の浸水対策計画も交えてご紹介すると共に、内圧推進管の技術や課題、適用範囲を理解していただき、今後の貯留施設計画の参考にして頂ければと思います。
(編集担当:人見 隆)
巻頭言 | 日越友好の絆日越友好の絆 ヤスダエンジニアリング(株)代表取締役(当協会理事) 安田 京一 |
今月の推論 | 「愚直」「愚直」 太郎&三郎 |
総 論 | さらに輝く「内水浸水対策の七つ星」 国土交通省水管理・国土保全局下水道部流域管理官付課長補佐(現岡山市下水道河川局統括審議監)3月31日入稿 斎野 秀幸 |
市民の安全・安心を守る横浜下水道 ~横浜駅周辺における浸水対策の取組み~ 横浜市環境創造局下水道計画調整部下水道事業マネジメント課担当係長(計画担当) 中島 智彦 |
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鋼製さや管推進工法による大深度の既設雨水調整池への接続事例 名古屋市上下水道局技術本部建設部建設工事事務所長 石上 孝浩 |
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歴史からひもとく内圧管の歩みとその設計 全国ヒューム管協会技術委員長 村崎 裕一 |
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解 説 | 3,600m3の雨水貯留施設の築造 呼び径3000上下2段の推進施工(最小土被り3.5m、離隔1.1m) (株)鴻池組 施工当時:現場代理人(監理技術者) 山内 佳樹 |
内圧路線の耐震性向上に寄与する合成鋼管用離脱防止継手 日本ヒューム(株) 秋元 昌哲 |
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ガラス繊維鉄筋コンクリート管(SSP)が水撃圧に挑む ゼニス羽田(株)大阪支店(日本スーパーラインパイプ工業会) 喜多村 裕二 |
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内水圧に対応したMAX推進管と設計手法について 栗本コンクリート工業(株)大阪営業所課長 浦 尚樹 |
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「Wジョイント管 NAIA」の概要と1kmを超える施工事例 藤村ヒューム管(株)技術開発本部技術営業部 吉本 勝彦 |
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内圧対応SR推進管の実施例 ─雨水貯留や逆サイフォン管路を推進工法で構築する─ 全国CSパイプ工業会SRJ部会技術委員 金丸 勇一郎 全国CSパイプ工業会SRJ部会需要開発委員 田口 清朗 |
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「超大口径PC推進工法」内水圧への適用性 超大口径PC推進工法研究会事務局 植竹 克利 |
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随 筆 | 今更ながらのコミュニケーション ECOSEED代表(エコビジネスライター) 名古屋 悟 |
ニュースFlash | |
ゆうぞうさんの山紀行 | 第16回 丹沢山5座縦走 藤代 裕三 |