雨水対策

2018年6月号 浸水対策の変遷「より安全な街へ」

 浸水被害軽減に向けて都道府県および市町村において、雨水排除施設の整備に積極的に取組んでいますが、未だ痛ましい事例が報道されています。
 これから梅雨の時期に入りますので浸水被害の発生が危惧されます。梅雨というと「しとしと」降る長雨のイメージでしたが、近年の雨の降り方に異変が起きているのではないかという気象庁やマスコミによる報道が増加しており気掛かりです。代表的な現象は積乱雲が次々に発生し「線状降水帯」を形成し、限定的な区域に、しかも短時間に集中して豪雨に見舞われ大災害を引き起こします。平成26年8月、広島市において前述の降水帯により法面崩壊が発生し甚大な被害をもたらしたことを記憶している読者も多いと思います。
 下水道整備の変遷を遡ると、当初は大都市において多発した浸水対策として開始され、あわせて生活環境改善のための水洗化が図られました。その後、超過降雨対策として10年確率降雨対策へ、それでも浸水被害が頻発する都市部においてはさらなる確率降雨のアップが進められております。
 当初の整備は開削工法が主流でしたが、交通渋滞の原因や地下埋設物への影響から非開削工法が採用されるケースが増加しました。このような背景のなか、大中口径に対応でき施工性・経済性に富んだ推進工法が着目され雨水整備に活躍しました。当時の推進工法は開放型の刃口式推進であり推進延長も短いものでした。近年、推進工法の技術開発が進められ、泥水・土圧式等の密閉型、曲線推進、長距離、大断面が可能になっております。浸水安全度向上のための整備手法として採用される増強管・貯留管整備にも多用されるようになりま
した。
 推進工法の発展が浸水対策としての下水道整備促進の一翼を担ったといっても過言ではないと思います。その推進工法の開発の経緯を振り返り今後の浸水被害軽減のため、安全な街づくりにどのような方法で寄与できるかに着眼し特集を組みました。
(編集担当:石北正道)

巻頭言 建設業における「人」を育てるための働き方の創造
青木あすなろ建設(株)執行役員東京土木本店副本店長
(公社)日本推進技術協会理事
鴨川  透
今月の推論 紙おむつの下水道投入を考える
北極星
総 論 最近の集中豪雨の特徴と今後の予測
(一財)日本気象協会事業本部防災ソリューション事業部先進事業課
片山 勝之
浸水対策関連の取り組みと推進工法への期待
国土交通省水管理・国土保全局下水道部流域管理管付課長補佐
宮本 豊尚
解 説 福岡市の浸水対策 ~レインボープラン~
福岡市道路下水道局建設部中部下水道課
福田 大樹
名古屋市における浸水対策事業
名古屋市上下水道局技術本部建設部建設工事事務所長
石上 孝浩
集中豪雨への考え方と施工方法 横浜市の浸水対策と都市部における浸水対策施設の施工事例
横浜市環境創造局下水道管路部管路整備課担当係長
清水 幸治
川崎市の浸水対策事業と高水圧下における既設貯留管への直接到達
川崎市上下水道局南部下水道事務所工事課
富岡 優一
千葉市における浸水対策について ~大規模貯留管から推進工法による暫定対策への変遷~
ヴェオリア・ジェネッツ(株)顧問(元千葉市下水道局建設部長)
土屋  潔
随 筆 今までの経験とこれから
大豊建設(株)土木本部土木技術部技術設計課
長田 裕美
ニュースFlash
ゆうぞうさんの山紀行 第28回 甲武信ヶ岳 石楠花を求めて
藤代 裕三

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