低耐荷力 基礎知識

2022年5月号 低耐荷力管推進工法の基礎知識

 今月号の特集テーマである「低耐荷力管推進工法」は、管軸方向強度の小さい、主に硬質塩化ビニル管を非開削で敷設する技術です。先行して開発された「高耐荷力管推進工法」との違い、特長は、「掘進に伴う抵抗力は先導体が受ける先端抵抗力と管列外周面が受ける周面摩擦抵抗力に区分され、先端抵抗力は推進力伝達ロッドを介し元押ジャッキ推力を直接作用させ対抗し、周面摩擦抵抗力のみ推進管を介して伝達する」ことにあります。
 低耐荷力管推進工法の開発は1980年代に始まり、その歴史は約40年となります。下水道用硬質塩化ビニル管が規格化されたのが昭和49年(1974年、JSWAS K-1)と45年余り前であることから考えると相当に早い開発着手とも言えます(ちなみに、推進工法用管(JSWAS K-6)の規格化は平成7年(1995年)です)。世界で初めての低耐荷力管推進工法は、ホリゾンガー工法から分派したエンビライナー工法で、その施工は1987年となります。
 工法の開発当時は、高耐荷力管推進工法の掘削方式を引継いだまま、推進抵抗力伝達方式を改良して小さな管軸方向強度を克服しました。基本とした掘削方式は、オーガ式、圧入式です。また、同時期に開発が進んでいた「径の小さなケーシング立坑」にも対応可能な工法も初期の段階で開発されていました。まさにユニットで時代のニーズ、課題に応えたものと言えます。しかしこれらの方式は、対応可能な地下水、土質条件に制約があり、その後、泥水方式、泥土圧方式による工法が開発され、また長距離、曲線に対応可能な工法も誕生しました。日本の推進技術、低耐荷力管推進工法は、現在でも世界で高い評価を得ています。
 令和2年度末における全国の下水道管路総延長は約49万kmとなり、硬質塩化ビニル管の延長はこのうち半分以上を占めると言われます。現在、推進工法用硬質塩化ビニル管の種類には、VPまたはVM管があり、その接合構造にはシール材を使用したSUSカラー継手、接着材を使用するスパイラル継手の2種があります。健康で健全な生活環境の確保に不可欠な下水道の未普及対策として難条件下でも早期に効率的に管路整備を進めるため、管材も含めてコンパクトで施工性の良い「低耐荷力管推進工法」の活用が有効です。また、最近では、下水道管路以外での使用機会も増えており、多様な工事での活躍も期待されます。
 本特集では、このような「低耐荷力管推進工法」について、方式ごとに「①工法の特長・基本的な機構」「②より正確な施工を支える周辺技術」「③施工現場で克服が難しい環境(自然・社会・作業)条件」「④今後取り組むべき技術開発」「⑤下水道工事以外での採用」の各項についてご紹介いただきます。本特集での工法紹介、施工事例が、今後の設計、工事施工のご参考になれば幸いです。
(編集担当:田口由明)

巻頭言 戦争の影
りんかい日産建設㈱事業統轄本部常務執行役員
(公社)日本推進技術協会理事
佐藤 幹男
今月の推論 DX→3R
知恵須 納人
総 論 低耐荷力管推進工法の概要
(公社)日本推進技術協会技術委員会低耐荷力部会
太洋基礎工業㈱常務取締役営業本部長
六鹿 敏也
解 説 低耐荷力管推進工法のパイオニア エンビライナー工法開発の経緯とこれからの展望
エンビ・ホリゾン推進協会事務局長
田 昌弘
軟弱地盤を得意とするスピーダー工法
スピーダー協会事務局次長
藤野 真孝
アンクルモールV工法に関わる様々な技術 ~工法概要と現場対応技術~
(株)イセキ開発工機建機事業本部
水元 将司
様々な土質に対応するユニコーンES工法
ユニコーンES工法研究会
小島 功
長距離複数曲線推進で難条件を克服するベル工法
ベル・ミクロ工法協会技術委員
畠中 直人
随 筆 2番目に人口の少ない村
大豊建設㈱土木本部土木技術部技術設計課
武田 晃汰
ゆうぞうさんの山紀行 第75回 初夏の金峰山
元横浜市下水道局
藤代 裕三
俳句会便り 第七十九回 中本郷顔記念「東雛」俳句会だより

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