発進・到達

2017年4月号 既設構造物への直接到達 その1

 我が国では、経済発展とともに、都市の地下には、上下水道、ガス、電気、通信等のライフラインが縦横に敷設され、さらに鉄道、道路、共同溝など極めて重要な構造物が地下空間に多く建設されている。しかし、経済活動や人々の生活の質の変化とともにますます都市が高密度化する中で、社会・経済活動においてより機能的で、また安全で安心して暮らせる都市づくりが求められている。都市は、施設の機能を維持しながら過去に建設された建築物・構造物等を新陳代謝し、さらに新しい防災施設やライフライン等の施設を建設することによりさらにその機能を高めていく必要がある。
 地下にパイプラインを敷設する場合、開削工法よりも交通障害や工事に伴う周辺環境への影響を低減できる推進工法やシールド工法が用いられる。これらのトンネル築造技術は、特に我が国において、長距離、急曲線、大深度(大土被り)施工等の技術開発が進み、世界的に最も高度な技術に進歩した。
 我が国では現在、インフラ施設の整備が進み、地下空間に敷設、建設されたパイプラインや構造物の維持更新の時代に入りつつある。しかしながら、近年頻繁に発生する局所的な集中豪雨による浸水対策や、想定される大地震への対策など防災機能をより強化するための都市づくりの事業が進められており、地下にはまだまだ多くのインフラ施設の建設が必要である。
 これら事業の遂行において、トンネル工事の立坑を築造するためには、各種地下埋設物が輻輳化している都市部では埋設物の切り回しや防護が必要であり、経済的また工期的な負担だけでなく極めて施工が困難となる場合がある。また、交通量から規制が困難な道路や、工事の振動、騒音などが周辺環境に及ぼす影響から立坑の設置が困難な場合がある。このようなことから、近年、立坑を設置することなく、マンホール、管きょおよび建築物等の既設構造物に掘進機を直接到達させ管路を構築する工事が増えている。
 直接到達する方法は、既設構造物に開口部を設けることに対する構造物の補強方法、接合部の接合構造、また、掘進機が安全に到達するための地盤改良等の補助工法、あるいは掘進機の回収方法など技術的な課題は多い。
 しかし、既設構造物への直接到達は、交通障害および周辺環境に対する影響の低減だけでなく、既設埋設物の回避によるコスト縮減や工期短縮、あるいは、到達立坑の省略によるコスト縮減効果が見込める可能性もある。さらに、掘削残土量の低減による廃棄物発生量の低減等を図ることも考えられる。
 このように立坑を設けることなく既設構造物に直接到達することが容易になれば、推進工法の適用性が飛躍的に拡大することが期待できる。今月の特集は、このように既設構造物に直接到達する工事が近年増えつつあり、その中でも特に施工方法や掘進機の対応等に焦点をあて、施工事例を紹介するとともに技術の現状と課題について報告する。
(編集担当:西口公二)

巻頭言 日本の下水道ブランド「推進工法」 ~水インフラ輸出・豪雨対策の主役への期待~
国土交通省水管理・国土保全局下水道部下水道事業課長
加藤 裕之
今月の推論 管路管理・「民」の出番!
LUCA
総 論 直接到達技術の概要と課題
(株)熊谷組土木事業本部シールド技術部技術部長
金田 則夫
解 説 超流バランスセミシールド工法における 既設構造物への直接接合技術について
(株)アルファシビルエンジニアリング施工本部技術部長
森田  智
あらゆる条件を克服し既設構造物へ到達させる『ヒューム管推進工法』
ヒューム管&ベルスタ推進工法協会
河西 一嘉
複合式推進工法による高水位・急曲線推進での既設構造物への到達および発進部回収施工事例 ─ハイブリッドモール工法─
地建興業(株)
葛原 一大
SH工法「既設構造物への到達」施工例
SHスーパー工法協会技術委員
瀬谷 藤夫
随 筆 ものづくりの視野
日特建設(株)技術本部技術開発第二部
横山 一輝
海外情報 GCUSベトナム委員会の活動報告
下水道グローバルセンターベトナム委員会委員長日本大学教授
森田 弘昭
今さら聞けない
推進技術の豆知識
第25回 機械式掘進手法には、泥水式、土圧式、泥濃式がありますが、その特長と違いは? 工法選択時の基本的条件はありますか?
推進豆博士
ゆうぞうさんの山紀行 第14回 残雪の瑞牆山
藤代 裕三

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